開業屋 原田 諦の飲食ビジネス情報  ≪飲食店指導実績 300社533店舗以上 日本一の飲食店・開業屋≫

ホテルの女将と板長の戦い!

テルの女将と板長の戦い!NO1

その日は、蒸し暑い一日だった。
昼を過ぎた頃、私は、事務所で社員と打ち合わせをしていた。
そこへ40歳そこそこであろうか、和服姿の美人が事務所へ私を訪ねてやってきた。
人目で何処かの”女将”風である。
「こちらは、原田先生の事務所でしょうか!」
事務所の入り口はもちろん、ドアにも我が社の社名看板がある。と言う事は、会社のお客ではなく、私個人のお客様に違いないが、私には彼女を見たことも無い。
事務員がその女性の近くまで寄って行き、「はい!そうですが、何か御用でしょうか?」
「ああ、良かったわ!先生はいらっしゃいます!」
「只今会議中ですが、お約束ですか?」
「いえ、突然ではお会いしていただけないのでしょうか!」
「少々お待ちください!先生に伺ってまいりますから。」
事務員とその女性のやり取りは、狭い事務所に筒抜けであった。会議は一段落していた。


「どのようなご用件でしょう!私が原田ですが・・」自らが出て挨拶をしたのである。
「ワァ〜良かったわ!お会いできないかと思いました。」
「ハア!どちら様でしょう」
「はい!わたくしは、満開ホテルの女将をやっております橋本と申します」
「そうですか!ここではなんですから、応接室へどうぞ!」
私は、何か訳ありと見て、彼女に気を使い、別室で伺うことにしたのである。
ソファーに腰を掛けると、
「実は、イタリアンハウスのママさんから、先生の事を紹介いただきまして、お約束もせずに大変失礼をいたします」
さすがは、ホテルの女将を勤めるだけの事はある。言葉遣い、その容姿全てが上品である。
「そして、ご用件とは?」
「はい!実はお恥ずかしい事なのですが、家の板前さんのことで先生にご相談に乗って頂けないかとおもいまして!」
「板前さんの事ですか」
彼女は、一瞬、顔をしかめながら話し始めたのである。

ホテルの女将と板長の戦い!NO2
「板前さん?どう言うことですか?」
「ハイ!わたくしがいけなかったのですが、板前さんに辞められたら、ホテルが困ると思い、これまで、板前さんの言うなりになってまいったのでございます」
「そうですか!それで何があったのですか?」
「ハイ!実は前々からウスウス感じてはいたのですが、出入り商人を脅かして賄賂を取っているらしいのです。今朝、業者さんの奥様から私に連絡がありまして、もう、品物を納める事はできないって!」
「そればかりではないのです。店を休んでは、出張だと言いましてホテルの用事でもないのに東京や伊豆の方へ何日も行ったきりで帰らないときもしばしばです。」
「まだあるんですよ!実は私どもが採用している若い調理人を会社に無断で、よそのホテルに貸してあげたりするんです!」
「とんでもない板前ですね!首にすればいいじゃないですか!」
「それが先生!家の人が板前を大事にしないと後で困るからといって、会社の役員にしているんですよ!ですから、首にも出来ず・・・」



「役員だったら余計に解雇しやすいじゃありませんか!別に株主ではないんでしょう!」
「ええ、ただの平取りです。しかし、首にでもしたら、板場の若いもの全部をつれていくような雰囲気がするんです」
「それでは、お客様にご迷惑が掛かりますので我慢していたのです。」
「それで、私に何をして欲しいのですか!」
「ハイ!先生は一流ホテルの調理人出身と聞いております。お願いです!私どもを助けると思って、顧問コンサルタントになっていただけないでしょうか」
「いや〜、難しい問題ですね、しかし、このまま放っておく訳にもいきませんよね!」
「先生!助けてください。このままでは信用を失うだけではなく、従業員とのトラブルも毎日起きているのです」
「分りました!お引き受けしましょう。しかし、解決まで三ヶ月ばかり時間を頂きますがよろしいですか!」
「ハイ結構です!本当に有難うございます」
彼女に安堵の表情がはっきり顔に出ていた。こうして、私は、満開ホテルの板前と一騎打ちの戦いが始まることになったのである。
ホテルの女将と板長の戦い!NO3
これまでの筋書きは、
満開ホテルの女将が、板長との問題に困り果て、私の事務所を訪ねてきた。しかし、その内容は、余りにもひどすぎることからコンサルティングを引き受ける事になったのである。

わたしが満開ホテルへ訪問したのは、あの女将が事務所に来てから一週間後であった。
その日は、雨上がりでどんよりとした曇り空であった。満開ホテルは、長野県の諏訪市にある。京都から名古屋へ出てそこから松本行きの電車に乗り、塩尻で乗り換える。
諏訪駅に着くと、女将がホテルの社長であろうでっぷりした男と迎えに来ていた。
「先生!遠いところを有難うございます」
「いや、全国歩いていますと、遠いとは感じないんですよ!」
「そうですか?でも、お疲れでしょうから、どこかで少しお茶でも飲んでいきましょうか」
「そうですね!諏訪へは昔、前の会社にいたころに顧問先がありまして三年ぐらい通っていたことがあるんですよ」
「まあ、そうでしたか!」
車は、黒塗りのベンツでいかにも社長専用と言う感じであった。

車に乗り込もうとすると、
「先生!私の主人です。今日はどうしても先生にお会いしたいと申しまして・・・」
「そうですか、始めまして、原田と申します」
「ご挨拶が遅れまして、女将が喋り捲っているものですから、つい申し訳ありません」
この社長は、女将の婿養子だそうだ。よって、女将の尻に惹かれている感じがした。
三人は、湖畔にある喫茶店に入った。そこで、女将が、
「先生!実はお茶を飲みながら、打ち合わせをしたかったものですから・・・」
「そうですか、分りました」
どうも、ホテルでは話せないような事情があるらしい。お茶に誘った理由がこれだったのである。
「先生!板長が今朝方仕入れに行くといって帰らないんですよ」
社長が口を開いた。私は、その意味が分らなかったが、今度は女将が言い出した。
「先生にコンサルタントをお引き受けいただいたものですから、あれから三日後に従業員を集めまして先生の話をしたのです!」

「ところが、板長が、何で俺に話もなくコンサルタントなんか呼んだんだ!といって、私に凄い剣幕で食い付いてきたんですよ!」
社長が顔を赤らめて話し出したのである。
私は、”これは考えていたよりも相当大変だな〜”直感的にこのように思えた。
話は続いたが、とにかくわたしの仕事は、依頼されたことを解決することにある。いろいろあっても、最善の方法で解決する。私は覚悟を決めていた。
いよいよ、三人は、それから薄黒い霞がかかっている満開ホテルへむかったのである。

ホテルの女将と板長の戦い!NO4
この話は、私のコンサルティング実例である。これまでの筋書きは、
ホテルの女将からコンサルティングを依頼された私は、満開ホテルのある諏訪湖へ出向いた。そこには女将の主人と女将が待っていたが、どうもより複雑なことになっていた。板長が市場の仕入れから帰らないと言う。

三人は、喫茶店を出てホテルに向かった。車の中では、女将と社長は沈黙状態にあった。さぞ、板前にいじめられている事なのであろう。見ている私は、二人がかわいそうにも見えてきたのである。
「社長も女将さんも心配ありませんよ!」私は二人を慰めた。
「ハイ!先生!よろしくお願いします」
三分くらいで満開ホテルに着いた。そのホテルは、庭園が綺麗に整っており、さすがに女将が店を仕切っている様子が伺えた。
玄関では、仲居さんが二人で出迎えをしてくれた。社長夫妻は、ホテルの裏駐車場へ車を置いて裏口から入ることになった。
とりあえず、ロビーの大広間に案内されて、暫く待つことになった。
「今、女将さんが参りますので、少々お待ちくださいませ!」

仲居さんがお茶を運んできた。
「今日は、板長は不在ですか?」
私は、この仲居さんに聞いて見ることにしたのである。
すると、
「先ほど、仕入れからお帰りになっておりますが、お呼びいたしましょうか!」
「いや、結構ですよ、もう女将さんも来る頃でしょうから。」
仲居と話をしているところへ女将が足早でやってきた。
「先生!板長が戻っています。」
「そうですか!それで、今日のスケジュールはどうしましょうか!」
「先生が立ててくださった、計画通りにお願いします」
「分りました!それでは、今日は二時間のミーティングをいたしますので、事務員以外は全員広間へ集めてください!」
私は、予めホテルの方へ三ヶ月間の改善カリキュラムを送っておいたのである。
「ハイ!今日の朝礼ですでに全員に申し伝えてありますので大丈夫です!」


「そうですか、それは良かった!でも、板長が帰られて良かったですね」
「ええ、心配しましたわ!」
女将は始めて笑顔を見せた。
午後三時からこのミーティングがスタートしたのである。
最初は、社長が私の紹介をする事になっていたが、女将がすることになった。理由は分らないが、社長は従業員席の隅に座っていた。
私の紹介が済むと、私は席を立ち全員を見渡し、
「始めまして、このたび、満開ホテルの経営指導をさせていただく異事になりました、原田と申します。皆さん、どうぞよろしくお願いします」
総勢50人くらいだったと思うが、その一番前に板長らしき人間が私を睨んでいる。
「ハハァ、この男が板長に間違いないな〜」
私は、直感でそう思った。そこで、
「板長ですね!申し訳ありませんが、自己紹介をおねがいたします」
こういったのである。その男は、突然のことでビックリした様子で目をキョロキョロさせた。
「ワシですかな〜」横柄な口ぶりでこういった。
いよいよ、ここから満開ホテルの板長との一戦の幕が開いたのである。
テルの女将と板長の戦い!NO5
この原稿は、私がコンサルティングした実例をストーリーにして書いております。
これまでの筋書き。
ホテルの女将から板長との問題解決を依頼された私は、いよいよ問題の板長と対面することになった。社員研修と言う場を設けて、こんどは、女将と板長の戦いではなく、私との一騎打ちが始まろうとしていた。

私の自己紹介がすんで、これから本題に入ろうとしたが、初対面と言うこともあり、従業員にそれぞれ自己紹介をしてもらうことにした。一番目に、私は問題の板長を名指ししたのである。これからどのような態度に出てくるのかを見極めるためであった。
「えっ、ワシですかね〜」
彼は、目をキョロキョロさせながら、
「ワシは最後でいいですわ!」
「いや!板長から始めてもらいます」
私は譲らなかった。喧嘩をするつもりなどないが、自分で自分のことを話してもらうことにより、お互の立場が理解できるからである。私は一流ホテルの調理人出身である事をみんなに告げた。これも、彼を威嚇する一つの武器であった。調理人は、調理人に弱いからである。

「わかりやした!ワシは満開ホテルの取締役調理長をしております!加藤です」
これで座ってしまったのである。
「板長!すみませんが、折角ですから年齢と特技や趣味、人生の目標を聞かせてください」
私は、丁重にお願いするような形で彼に迫った。
「別にいいじゃないですか、そんな事!」
「いや!板長のことをここに働いている人が皆んな知らないし、板長も皆んなの事を知らないでいるんじゃないですか!これでは、一緒に仕事をしていてもコミュニケーションをとることは難しいでしょう」
私は、このときとばかりに捲し立てたのである。
すると、意外にも、板長がいきなり席を立ち、話し始めたのである。
「わしは、今年45歳になるが、満開ホテルには6年目ですわ!趣味は魚釣り、特技は料理を作ることかな〜。人生目標といきなり言われても思い浮かばんが、とにかく、このホテルを長野県で一番にしたいだけじゃよ!」
彼の目は嘘には見えなかった。
これを聞いていた、女将と社長は、薄ら笑いを浮かべていた。しかし、他の従業員は、真面目に聞いていたのである。

「いやー、有難うございます。さすがは満開ホテルを預かるだけの事はありますね〜」
私は、精一杯のお世辞を言った。これに板長が気づかないはずはない!
「先生!さすがコンサルタントですね〜話が上手いや!」こういって笑った。
それから、フロントマネージャー、仲居頭と次々に自己紹介が進んで行った。しかし、板長がイヤに落ち着かない様子である。
そして、いきなり、声を荒げて
「社長!こんなことやっていてもお客が来るわけじゃないだろうが!」
社長は、隅に座ってたせいか、黙ってこれを聞いていた。そこへ女将が、
「板長!今日は先生がみんなと話がしたいというので、集まってもらっているのよ!」
「そんな話は、社長と女将でやれないいじゃないか!」
そういうと、板長はいきなり立ち上がり、部屋から出て行ってしまった。
残された従業員は、みんな下を向いてうつむいている。折角の場が白けてしまった。
私は何もないかのように、講義を続け終らせたのである。
しかし、仲居さんや調理人たちがなぜか落ち着かない様子であった。どうも、何かに恐れている様子であった。
”ここに何かがある!”私は直感でこう思うのであった
ホテルの女将と板長の戦い!NO6
このストーリーは、私のコンサル実例を記事にしました。
先日までの筋書き・・
ホテルの女将と板長のいざこざが絶えないことから、コンサル依頼を受けた私は、早速、ホテルにつくなり全員ミーティングを開催するが、板長が途中でその席を立ち、部屋を出て行ってしまった。

そこで、一番古くから勤務している仲居さんを呼んで、経営者以外の意見を聞くことにしたのである。
「仲居さん!あなたは、板長と上手くやっていますか」
「はい、仕事は上手くやっていますが、あの板長は怖いんですよ」
「怖いと申しますと!」
「はい、すぐに従業員を怒鳴ったり、物を投げつけたりするんです」
「本当ですか!」
「はい、社長にまでするんですよ」
「なぜ、首にしないのですかね〜」

「私たちには分りませんが、次の板長をやる人が居ないからといっていましたよ」
「そう、でもみんなが嫌がっているんでしょう」
「あんな人好きになる人なんかいませんよ」
仲居ははき捨てるように言った。
「分りました。ありがとう、お仕事頑張ってください」
私は、女将さんに帳簿を持ってきてもらい、そこで経営分析をすることにした。女将さんが、材料やから賄賂を貰っていると言う板長の事実を見つけるためであった。
帳簿を広げてみてビックリしたのは、毎日100万円以上の売上があるにもかかわらず、赤字経営だったのである。
「女将さん、これは本当の帳簿ですか」
「はい、うちは経理がやっておりますのでそのままです。」
「原価が52%ですよ」一般的にホテルの食事原価は25〜28%である
「はい、板長が一番いいものを仕入れろ!といって聞かないんです」
「それでもメニュー原価には限界があるじゃないですか」

「先生!そんなことを言ったら、私たちは殺されちゃいますよ」
「でも、原価率52%では、エージェント料を15%払ったら、これで67%ですよ」
「うちの人も、いつも板長に言うんですが、板場は俺が預かっているんだから口を出すなと、いうんですよ」
これで、材料費が高いのは材料卸屋も賄賂を取られているから、卸値も高くなっていることが判明したのである。
次に、若い調理人を呼んでもらった
「君は親方が怖いかね!」
「ハイ、でもいい人ですよ」
「ほう、どんなところが?」
「東京へ行ったりすると、必ずお土産を買ってきてくれるんです」
なるほど、私は彼が部下に信頼されるためのテクニックを見抜いてしまったのであった。
ホテルの女将と板長の戦い!NO7
この記事は、私が実際にコンサルティングの実例を書いています。
これまでの筋書き。
いよいよ、問題のホテルへ乗り込んだ私は、社員研修会を利用して、仲居さんや調理人たちとの個別ミーティングを開始した。そこで、分った事は、板長が短気で従業員を怒りとばすことから、嫌われている事、そして、板場を空ける穴埋めは、手土産を買ってくることであった。

仲居さんと調理人の個人面談がすんで、いよいよ板長との面談に入ることにした。
幸いに、宴会も入っていなかったことから、板長は手を空けることができる。そこで、女将さんに呼んでもらうことにしたのである。
板長は、かしこまった様子で、部屋に入ってきた。
「どうもお疲れ様」、私は労いの言葉を掛けて、彼の気持を和らげることにした。
「いえ、先生こそお疲れ様です」なんとも不気味な神妙さであった。
「板長!実は、このホテルの食材原価が高くて赤字になっているのを知っていますか!」
「ええ、知っていますけど、今時良い物を使わなければ、お客は納得してもらえませんよ」
「それは良いものをつかうに越したことはないよ!しかし、赤字になってしまったら、元も子もないじゃない!」



「それは女将が言ったんですか!」彼は、何となく面白くなさそうに言った。
「いや、帳簿を見せてもらって、先ほど分析してみたんだよ。どう、あんたの腕なら値段にあった食材でお客さんを満足させることができるんじゃないの!」
「先生!ワシはこの辺の旅館やホテルの料理人会の理事をやっている関係で、変なもの出したら、笑われますね〜」
「板長!何を言ってんですか!板長の見栄のために、このホテルが赤字になってもいいんですか!」
「いや、そうじゃないですが、宿泊客で儲ければいいんですよ!これまでも、そうしてきたんですから、」
「板長、昔の話ですよそれは、マスコミでも見て分るように、今は、調理人が看板になってお客を引いて、料理で儲けている時代ですよ!」
「先生!諏訪はね〜、東京からのお客が多いし、善光寺参りの帰り客が多いんですよ。だから少し部屋代を値上げすれば儲かるはずなんですよ」彼は、私の話を聞こうともしなかった。

「板長、わたしは今月からこのホテルの経営改善を依頼されてこうしてやってきたのです。したがって、あなたと同じ職人ですから、仕事はきっちりやらせてもらいます」
「それは分っていますわ〜」
「したがって、板長とこの改善を一緒に取り組まなくては出来ませんので、力を貸してください」彼は、うなずいて、こういった。
「そりゃ〜私も諏訪では満開の加藤と呼ばれている男ですから、赤字の店に勤めていると言われれば、コケンにかかわりますわ」
「ありがとう、それでは早速ですが、献立表の一品づつをメニュー基準表にしてください」
「若い衆を使ってもやってください。」
「それから、これから板長が個人的に出張する場合は、欠勤にさせてもらいますよ」
「そんな!ワシは店の若い衆や付き合いで行っているんですよって、それじゃ〜、このホテルに勤めていられませんが!」彼は、顔を赤らめていった。
「もちろん、仕事で行く場合には、出張理由書を提出していただきます。何故ならば、あなたが何でも自由にできるという姿を見せると、若い衆も真似をしたくなり、規律が保たれませんよ」かれは、返事をしなくなった。



こうして、二人のやり取りは、一方的に私のほうから条件を出していったのである。
彼は、それでも店を辞めさせてくれ言わなかった。
いよいよ、これから彼の一番痛いところである「賄賂」について話し始める事になるのである。
テルの女将と板長の戦い!NO8
このストーリーは、私がコンサルティングした実践記事を書いています。
これまでの筋書き。
板長といよいよ直接対決を向かえた私は、全ての問題を一気に解決することにした。とりあえず、無断欠勤は今後許さない事を承知させ、いよいよ、業者から貰う賄賂について問いただすことにしたのである。彼は、果たしてどのように出るのか!

「板長!二人だけだから何でも聞くことにするよ。いいね!」
「ええ、いいですよ!」
「あんた、業者から賄賂を貰っているだろう!実は、業者のおかみさんから、クレームが出ているらしいよ。本当なのかね!」
彼は真っ赤に顔を染めて言い訳に入った。
「先生!賄賂だなんて人聞きの悪い事といわないでくださいよ」
「でも、本当のことなんだろう!」
私は、これまでのように優しくはなかった。
「実は、業者がお世話になるから!といって無理やり置いていくんですよ。でも、それは、板場のお茶菓子や薬代にしていて、自分でとることはないですよ〜」

「そう、でも貰うことそのものが駄目だろう!だって、取引はこのホテルだろう。なんで板場がそんなもの貰うの!」
「一番初めに、社長に言ったよ!でも、板場で何か使うことあるだろうからその資金に当てれば、と言われているんですがね」
私は、唖然とした。社長がそれを許していたのでは攻めることなどできるはずはない。
「そう、知らなかったとは言え、それは悪かったな〜」
わたしは、彼に頭を下げて謝った。
「みんな、あの女将が先生に告げ口しているんじゃろが!」
「そうじゃないが、色々なことを全て知っておかないと、指導できないし、あんた達と話が合わなくなるでしょう。ごめん、私が悪かった。」
「いやいいですよ、私はいつも厄介者にされていますから」彼はいじけたようにこう言った。
「分った!この問題は、私が社長に攻め寄るから、板長は何も言わなくてもいいからね!」
「ハイ、そうします」
これでは、彼の思う壺になってしまう。そこで、彼に、原価率の改善に攻め寄ることにしたのである。

「板長、今の事は忘れてくれ!しかし、今後は、業者からのもらい物は一切受け取らないようにしてください。若い衆にもきつく言っておいてください!」
「わかりゃした!ワシが賄賂を取っているように言っていたんですか?」
「いや、そうじゃないよ!社長がいいといったのに、そんなこと言うはずはないじゃ。私が勝手に思っただけですよ。全国を歩いていると、和食の板前にそんな人もいるからね!気にしないでくださいよ」ここで、社長夫妻のフォローしておかなければならなかった。
「もういいですよ、先生!」
「さて、それでは、具体的に、原価率を下げる作業に入ってよ!」
「どうしたらいいんですかね」
「とりあえず、アンタが高級な材料ばかり使うから、原価が上がるんだから、もっと一般的な食材でこのホテルのオリジナル料理を開発してよ」
「先生、和食は食材を売る商売ですよ。」
「しかし、その食材に合った料金が取れないんだから仕方がないじゃ〜」
「もし、出来ないならば、板場全員で料理の開発コンペをしましょう!」

「うちの若いもんがそんな事できるわけね〜よ」
「やって見なければ分らないでしょう」
「アンタは審査員でもやってよ」
「いいや!ワシもやらせてもらうよ」彼は意地になったようだ。
「そうかね、それじゃぁ、来月私が訪問するのが20日だからちょうど一ヶ月あるからそれまでの期間でお願いします」
「若い衆には、私のほうから伝えますから」 
こういって、わたしは、彼を説得した後、調理場へ行って全員にこのことを伝えた。
「いいですか、皆さんがいつも考えている料理を自由に考えてください!しかし、安い材料で高級料理を考えていただきます。優勝者には、5万円を社長より出るそうです」
「本当ですか!」みんなから歓声が上がった。
「板長に負けないように頑張ってよ!ね〜板長」
「ああ、ワシがが負けるわけね〜じゃ」
こういって、わたしの顔を見てにやりとした。
これで、仕掛けは終った。なんとも面倒な話だが、時間を掛けなければ解決しそうもない。
わたしは、このホテルを出ると”フー”ため息が出るのであった。
ホテルの女将と板長の戦い!NO9
このストーリーは、私のコンサルティング実例を記事にしております。
これまでの筋書き。
ホテルの女将から、板長との問題解決にコンサル依頼を受けた私は板長との対決に挑んだが、こちらの一方的な要望で終ってしまった。さらに、原価削減へ向けて、料理の開発に調理場全員参加で実施することにしたのである。

桜が満開の諏訪湖半に、花梨並木が新芽を出している。満開ホテルの名前に相応しいこの時期であった。
ホテルに着くなり、私は、今日の料理コンテストの状況を女将にうかがった。
「女将さん!みんなやっていましたか?」
「それは、みんなこれまでにない真剣な顔つきでやっていましたよ!」
「そうですか!それは良かった」
「五万円の効果がこんなにあるんですかね」
「いいや、これまで彼らに自分から何かをやれる環境を与えていなかったからですよ」

「そうですね!全部板長が仕切っていましたからね」
「早速ですが、料理の審査会を始めましょう」
「審査委員は、私と女将、社長、仲居さん10人でやりますので、この採点表を配ってください」。わたしは、前もって作成してきた料理採点表を渡して調理場へ向かった。
「やあ、皆さんおはようございます!」
「おはようございます」調理場全員から元気な挨拶が帰ってきた。前回には見られない光景であった。
「板長!調子はどうですか?」
「いやあ〜なかなか大変ですわ」。こう言いながらも楽しそうな雰囲気であった。
「それでは、審査を始めますので、料理を並べてください!しかし、無記名でお願いします」
「今日の審査委員は、私と女将、社長、中井さんの13人です」
「この料理を誰が作ったかは誰もわかりませんので公平です」
「採点は、デザイン、盛り付け、料理のコンセプト、食材原価、希望売価、で行います」
ホテルの女将と板長の戦い!NO10
このストーリーは、私のコンサルティング実例を記事にしています。
これまでのあらすじ。
ホテルの女将から、板長との問題解決を依頼された私は、解決方法の一つに調理場全員による料理コンテストを実施することにした。

桜の花はもう残ってはいないが、諏訪湖半の花梨並木に青々とした新芽が勢いよく茂っている。
ホテルに着くと、早速調理場へ向かった。そこには、調理人の力作料理が並んでいる。その優勝料理は、なんと、板長の作ではなく、二番板の鈴木君であった。
「鈴木君!お目でとう」
「とんでもない!先生!恥ずかしいですよ」
「でも板長に勝ったのだから凄いじゃないか」
そばにいた板長が
「鈴木!これからはお前が板長だな!」本気とも取れる真面目な顔でこういった。
「さて、この評価の違いをみんなに聞いてみよう」

私は、仲居さんに代表して評価をしてもらう事にしたのである。
「そうですね!まず、色合いがこれからの色かな〜。そして、4,000円のお値段でしたら、私どももお勧め易いんですですよ」
「ありがとう!そうですね、値段がちょうどいいですね。それと原価が30%で抑えているところも見事だね!」わたしは、さらに付け加えた。
「この料理の最も優れているところは、お客様を考えて開発しているところにあります。一般には、自分の思い込みや腕自慢の料理になってしまうものですが、それではお客を喜ばせることが出来ないことから、高く感じさせてしまうのですよ」
「板長!鈴木君の料理は、あなたが作った料理ほど完成度は高くないものの、お客にとっては、あなたの料理よりも喜べる料理なのですよ」
「今後は、このような料理に取り組んでください!」
彼は、うなだれていたが、みんなの輪から消えてしまった。

女将との打ち合わせが終った。
「これで、板長が理解できないようであれば仕方ないので入れ替えも考えるようですね!」
「ハイ、分りました。本当に有難うございました。」
玄関へ向かうと、なんと、そこに板長が背広に着替えて待っているではないか!
「えっ、板長!どうしたの?」
「先生!駅まで送らせてください」
私は驚いたのも無理もない!調理場の様子から退職したいとの申し入れかと勘違いしてしまったからである。彼の運転する車内で、
「せんせい!有難うございました。私は、”井の中の蛙”でした。こんな田舎にいるものですから、少しばかりの腕に慢心していたのです。これから心を入れ替えて満開ホテルのために頑張ります。そして、このホテルが良くなったら、一流と呼ばれるホテルでもう一度勉強をしなおしてみたいと思っています」
「そうですか、頑張ってください」
夏がもうすぐやってくる、諏訪の湖畔に陽光が輝いていた。
これで、私の役目は終った。
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