開業屋 原田 諦の飲食ビジネス情報  ≪飲食店指導実績 300社533店舗以上 日本一の飲食店・開業屋≫

二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産


二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(1)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
4店舗を経営する、ファミレスチェーンがあった。一時の外食ブームの勢いに乗って、次々と店を出していった会社である。とくに、この社長は若く、勢いもあったことから、周りの人の応援も多かったのである。
私は、コンサル会社に勤めている時期に、この経営者と会った。とても優しい人間で、従業員も彼の人柄に大勢ついていた。初対面でも、彼は快く迎えてくれた。私は、其の全店舗をクリニックしたが、なんとも料理をほめるには至らなかったのである。
何回か通っているうちに、何となく友達関係みたいになっていったのは、必然であった。

店舗を一通りチェックして、コンサル開始から三ヶ月目であった。
「社長!今日から帳簿を見させていただきますよ!」
わたしは、これから経営内容をチェックしようとした。もともと、別のコンサルタントが長期訪問していたのだから、問題はないものとは思っていたが、私なりに全てを把握しておかなければならないと考えたからである。
しかも、彼は、もと経理士だったとのことから、帳簿を見るのは店舗チェックが済んでからでもよいだろうと考えたからであった。すると、
「え、先生!帳簿を見るんですか」
とこう言うのだ。私は、不思議に思った。
「え、帳簿を見せられないんですか」

「いや!先生の会社から何人かの先生が来られましたけれど、誰も帳簿を見せろといった先生は居なかったですよ」
「そんな馬鹿な!だって、帳簿を見なくて何で経営判断していたんですか?」
「私は分りませんが、ほとんどの先生が、店を回って、試食をするだけで帰ってしまいますよ」
「本当ですか、そんな筈はないんですがね〜」
「本当ですよ!でも、帳簿は見てください!事務員に用意させますから」
こういって、事務員に帳簿の用意をするよう指示をしたのである。
事務員から渡された帳簿を見ると、会計事務所から加工されたような、しっかりした試算表や決算書が揃っていた。

しかも、その内容が素晴らしい内容である。
「社長!経営内容は優秀ですね!これじゃコンサルタントは要らないでしょう」
私は、お世辞も踏まえてこういった。
社長は、満足げに、
「先生!コンサルタントの先生って気楽でいいですね!」とこういうのであった。
其の晩、彼につれられてクラブへ行く事になったが、そこでも大変人気者であったのである。
しかし、チョット気になることが・・・
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(2)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
前回のあらすじ、コンサル会社に勤務していた私は、あるファミレスチェーン店の経営指導に着いた。店舗クリニックを終えた私が、帳簿を要求すると、社長が驚いた表情をしたのである。

その日は、ホテルに泊まり次の訪問会社へ移動したのである。しかし、少し気になることがあった。それは、経営状態が良好にもかかわらず、店内の絨毯が破れていたり、ひどく汚れている店が多いのである。
「どうして、こんな大事なことを放って置くのだろう・・・」このことが凄く気になりながらも、社長に問うことをしなかった。

次の訪問日に、私は、社長にこのことを聞いた。
「社長!店が少し痛んでいますね。この分では売上が落ちる日が近いですよ。一日も早く改装をしませんと・・・」
すると、社長は、
「ええ、何とかしなければならないんですが・・・」
「思い切って改装してみたらいかがでしょう」
「ハイ、計画してみます」
こうして、私は帳簿を確認しながら、財務的な部分を念入りにチェックしたところ、毎月の収益と余剰金が合わないのであった。とても不思議な現象である。
もしかしたら、社長の使い込みかも・・・。

「社長!この収益の資金は、何処へ計上されているんですか?」
社長は、頭をかきながら、
「いやー、先生には誤魔化しが効かないですね〜」と、顔を赤らめて言うのであった。
「どう言うことですか、この帳簿は偽物なんですか」
「すいません!銀行の借り入れを有利にするために、別の帳簿をつくっていまして・・・」
「そんな事をしたって、経営がうまくいくはずはないでしょう」
そこで、今度は本当の元帳を出してきたのである。
「先生!申し訳ありません。これが本物です。」
この帳簿を見て、私は唖然とした。

売上は著しく低下しており、赤字の店舗が2店舗あることから、他の2店舗の利益を全て帳消しにしているのである。
しかし、それでもおかしい・・・
私は、更に調査を進めると、何と、とんでもないことが見つかったのである。
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(3)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
これまでのあらすじ、
ファミレスチェーンの社長が二重帳簿帳簿を作っていた事を見破った私は、正式帳簿をチェックしていると、とんでもない問題を見つけたのである。

それは、借入金が膨大になっていることであった。しかも、一つの銀行から何口もの融資を受けているが、その銀行取引も、5行に渡っているのだ。
「社長!どうしてこんなに借り入れを増やしたんですか」
「ええ、実は売上が低下するばかりで、どうにもならないんですよ。しかも、一番新しい店舗に大きな投資をしてしまったのですが、とんでもない売上でして、どうにも資金繰りが出来ないのです。」

私は、その店を確かに店舗クリニックしたが、アイドルタイムだったために、お客は皆無であった。それでも、それほど気にしていなかったのだが、店の感じがとても冷たく感じたのであった。全てが、カラスを使用して、おしゃれな雰囲気をデザインしてあったからである。
そのときの、店長は、何と現在目の前にに居る女性事務員であった。
わたしは、その内情を聞いて見ることにした。
「石川さん!あなたが事務員と店長を掛け持ちしていて店の管理がおろそかになっているからじゃないんですか?」
「そんな事はないんですが・・・。先生が来られているものですから、私は今日、事務所におりますが、いつもはほとんど、店に出ているんですよ」


「先生!あの店の店長を部長の長山にさせていたのですが、全く売り上げが上がらない上に、他の店の売上も落ち始めたものですから、この石川と代わらせたんですよ」
このように社長が彼女の弁解を代弁した。
「そうですか、では、今夜にでも部長と合わせていただけますかね、私は未だ部長にお会いしていないんですよね」
「そうでした。大変失礼でしたが、彼が現場に居ないと我が社は店が回らないんですよ」
「社員が少なすぎるんですね」
「ええ、できるだけアルバイト・パートで運営しなければ、人件費がかさむものですから・・」

「人件費の問題よりも、商品力が落ちているのはそのためだったのですね」
「ええ、せめて原価率だけでも抑えておかないと、どうにもならないんですよ」
こうして、”ああ言えば、こう言う”この社長の言い訳は半端ではなかった。
しかし、現在の売上では、資金繰りができる筈もない。それに、流動負債(現金借り入れや未払い金など)がすでに売上の3か月分を超えているのであった。
もう、この会社は・・・。
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(4)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
ファミレスチェーンの経営指導をすることになった私は、帳簿のチェックから資金ショートしている事や経営状態が最悪である事をつきとめ、その晩、部長と合うことにしたのであった。

部長は、背が高くとても飲食業に従事しているようには見えないほど、生真面目そうであった。
「部長!始めまして、原田です。こんど、私が御社の担当をすることになりましたので、今後ともよろしくお願いします」
私のほうから、先に挨拶をした。いろいろ聞いておかなければならないことからである。

「先生!噂は聞いております!こちらこそよろしくお願いします」
「私の噂は、よくないことばかりでしょう。しかし、この会社は、どうですか」
「いや、大変です。何しろ社員が全て素人ですので、教育も大変で、その上に社員が少ないものですから、手が回らないんですよ。先生は、伝説のコンサルタントという噂ですので、心強いです」
「そんな事はありませんよ。しかし、そうでしょうね。4店舗を経営する会社になっておりませんよね」
「イヤーお恥ずかしいですが、何とかしないと、社長がかわいそうなので・・・」
こうして、社長をかばうのであった。
「社長はともかく、皆さんがこのままでは大変でしょう」
「ええ、実は、従業員の何人かが、今月退職するんですよ。それも、我が社で一番優秀な社員なんです」

「そうですか、部長はまた忙しくなりますね。どうでしょう!この次に来たときに、全社員を集めて、会社の決起大会でも開催してみませんか?」
「本当ですか!有難うございます。これまでの先生は、事務所を見てそのまま帰られるので、コンサルタントの顔を見たことも無い社員が多いんですよ」
「そうですか、このままでは、どうにもならないでしょう。店の売上は低下している一方だし、その上に社員に辞められたら、ますます、ひどい状態が来るでしょう」
「そうなんですよ!我々も何とか頑張っているんですが、我々の力だけでは、もうどうにもならないんです」
この部長は、未だ30歳くらいだが、情熱を持って居るので社長が何よりも頼りにしている人物になっているらしい。

「部長、社長はいろいろ隠し事があって、わたしがこれまで訪問しているうちに判明した事は、大きな資金ショートを抱えているという事だけなんですよ」
「実は、そのことなんですが、社長も辛いらしくて、会社にはほとんど居ないんです。」
「え、どうしてですか。何処にいるの?」
「先生だからわかって頂いていた方が良いと思いますので、お話しますが、この事は、従業員達には話さないで置いてください」
こういって、部長が私に話した事とは、・・・。
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(5)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
これまでのあらすじ、
会社の経理を誤魔化して、優良企業に見せていたこの会社は、私が帳簿のチェックから見破った。そして、活性のために、部長との会談で意外な事実が・・・。

「部長!どう言うことですか?」
「ええ、実は、従業員には聞かせられないことなんですが、社長はほとんどゴルフ三昧なんですよ」
「ゴルフ?ゴルフもお金が掛かるんじゃないんですか?」
「はあ、お金はかかるんでしょうが、会社に居られないんではないでしょうか」

「しかし、社長の責任もあることですので、仕方ないじゃないんですか」
「ええ、ですから、毎日、支払や業者の催促には我々が上手く誤魔化している状態なんです」
「ええ、誤魔化していても、何れはどうにもならないでしょう」
「そうですね!」
部長もこれには手の打ちようがないといった表情でその後の言葉はなかったのである。
私は、社長にこの問題をどのように解決しなければならないか、を伝えなければならなかった。
その日は、部長との会談に終止して、仕事を終える事にしたのである。
しかし、部長には
「部長!次回の訪問では、社員による決起大会を開催するので、その準備をして置いてください」

「分りました。何かありましたらご指示を下さい」
「とにかく、皆が元気になるような仕掛けをしましょう。太鼓などがあれば用意してくれれば、いいのですが・・」
「太鼓ですか?」
「ええ、太鼓のリズムで全員が円陣を組んで気勢を上げると、皆の本心が表面化するんですよ」
「そうですか!分りました。準備しておきます」
「それから、もう一つ、頼んでおきたい事が・・・」
「何でしょう・・・」
「社長のゴルフ三昧が、これ以上増えてきたら、私へ連絡を下さい」


「分りました。必ずご連絡をいたします。先生!本当に有難うございます。先生のような方にお会いできた事を一生忘れません」
「何を言っているの!これからが大変だよ!お互いにやれるところまで頑張ろう・・・」
「ハイ!」
彼の目頭が潤んでいるのが、私にはむなしく思えたのであった。経営者の無責任さを、この部長は命がけで守ろうとしているのだ。私もこの従業員達のために、持っている全てを発揮して助けなければ・・・。こう思いながらホテルへ向かった。
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(6)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
これまでのあらすじ。
緊迫している資金ショートを隠していたファミレスチェーンのコンサルを担当した私は、この改善に取り組まなければいけなかったが、手の打ちようがなかった。そこで、部長と相談の上、決起大会で社員の士気を高めようとしたのである。

翌月、私は訪問する事になった。そんなにのんびり出来る状態ではなかったが、その当時は、私の顧問先が70社もあったことから、毎日3社づつ訪問しなければならなかったのだ。そこで、部長との連絡を密にして、電話でのやり取りで指示を出してきたのである。

当日の準備は万端であった。この部長は本当に真面目に仕事に取り組んでいるのが良く分った。決起大会は、一番営業不振で苦悩している店で開催する事にした。
社長の挨拶からはじまったが、体裁の良い話やモチベーションばかりで、社員達の顔は、聞き飽きた!という表情をしていたのである。しかし、社員達は、会社の事情を知っている事から、社長の本音を聞きたがっていることが表情からも伺えたのである。
そこで、私は会社の事情を隠すことなく話す事にした。これは前もって、部長との話し合いが出来ていたのである。
私は、とりあえず、借金や負債の話はせずに、県内一番企業を目指す事を熱く語った。次に、部長が壇上に立った。そこで、

「先生!有難うございます。僅か3ヶ月しか私達の会社を知らない先生が、こんなに私達の会社を心配してくれているんだから、皆、本気で頑張ろう!」こう言いながら、号泣してしまっあのである。
これまで、一人でこの問題を抱えていて、誰にも言えずに苦しんでいたに違いなかった。それを私が表面化させたことで、彼は肩の荷が一気に取れたのであろう。何ともかわいそうになってしまい、私も涙ぐんでしまった。集まっていた社員達もパートさんも、そして、事務員の石川さんも泣いていた。
しかし、人間の反動とは怖いものである。
これが、火付けとなって、全員が気勢を上げ始めたのである。太鼓が響き、各店の店長達が涙ながらに円陣を組んだ。
「わっしょい!わっしょい!頑張るぞー!やるぞー!」

たしかに”言霊”そのものだった。わたしは、社長の顔を見つめた。そこには顔中涙にまみれた彼の姿があったのである。彼は声を上げて泣いていた。彼も同じように、苦しんで誰にも打ち明けられなかったことが、全てオープンされた事で、楽になったのであろう。
「先生!すみません!本当にすみません!このまま私は死んでも幸せです」
「何を言っているの社長!皆が支えてくれるよ。大丈夫だよ。だから、皆を信じてあげようよ」彼は、もう声がでなかった。社員達の円陣気勢は、暫く続いていた。
そして、その夜のこと・・・。
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(7)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
これまでのあらすじ、
極端な資金ショートが発生しているファミレスチェーンのコンサルを引き受けた私は、部長に指示を出して、”社員の総決起大会”を開催した。その席は、精神弾圧から解放された、部長と社長、そして従業員全員の感動に包まれ、全員が涙に埋もれていたのである。しかし、その夜、・・・

私は、決起大会の目的が遂げられた事に満足して、ホテルに向かおうとした。そのときである。
「先生!実はお話が・・・」社長が深刻な顔をして・・・

「何でしょうか?」
「実は、もうコレ以上、経営を続ける事は難しいんです」
「でも、何とかしないといけないでしょう。早速、資金繰り計画を立てましょう」
「ええ、分りました」
しかし、このとき、社長にその意欲が見えなかったのである。
この表情を察知した私は、もう、この会社は立て直せないであろうと思ったのである。
「社長、このあとどうしようとしているんですか」
「ええ、私は、もう死ぬしかないでしょう」
「そんな馬鹿なことを・・・」

「もう、手がつけられません。銀行の保証人には、家族をはじめ、親戚兄弟まで全てがなっていることから、倒産させれば、身内一同が破産してしまうんですよ」
表情を変えることなくこういうのであった。
「そうですか!何とか乗り切れる方法を考えて見ますよ。それでは、すべての借入金の返済計画を立ててみましょうよ!」
「ええ、でも、無理だと思うんですが・・・」
やはり、もうこの社長には、会社を立て直す気持は全く持っていなかったのであった。
私は、この会社を倒産させる事なく何とか救える方法はないものかと考えた。
当時は、会社更生法などの手続きが出来なかった事から、あとは、M&Aに持ち込むほか方法がなかったのである。
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(8)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
これまでのあらすじ、
借金でどうにもならない状況に追い込まれているファミレスチェーンのコンサルを引き受けた私は、何とか立ち直る方策を考えようとしたが、肝心の社長本人にその意欲は感じられなくなっていたのである。

その夜、ホテルに着いて着替えようとしたとき、フロントから電話が入った。
「お客様がロビーでお待ちですが・・・」
このお客様とは、何と先ほど別れたばかりの社長であった。

「社長!どうしました。」
「ええ、先生!私はもう駄目です。これからどうしようかと考えているんですが、先ほどは何かと言い出せなかったものですから・・・すみません!こんなところまで押しかけてしまいまして」
「いいや、いいですよ、分りました。社長!借金はどのくらい残っていますか?」
「そうですね、かれこれ一億円くらいになっていると思います」
「社長!もしもですよ、もし、この会社が売れたら売ってもいいですか」
「そうできれば何よりですが、そんな事ができるでしょうか」

「はっきり断言は出来ませんが、話してもよければ、相手を探しますが・・・」
「もちろんです!先生、よろしくお願いします」
こうして、私は、M&Aを持ちかけたのであった。
それから、一週間後、コンサル会社の社長へこの話を持ちかけてM&Aの相談をした。
「よし、お前が言うのだから大丈夫だろう!早速、他の会員へ情報を流してみよう」
こうして、M&Aの話は明るみになっていったのである。
次の周であった。事務所へ一本の電話が入った。
「先生!何とか資金繰りが出来そうですので、先生にメニューを診てもらいたいんですが・・・」
チェーン店の社長からの電話であった。

「エッ、資金繰りが出来たって、どう言うことですか、先日の話は進めてしまいましたよ。」
「とりあえず、会社の方へ来ていただけないでしょうか」
私はあっけにとられてしまった。しかも、もうこの会社の転売の話も進めてしまった。これを今更、撤回する事は、全員の信用を失う事になる。どうしたら・・・・。
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(9)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
これまでのあらすじ、
ファミレスチェーンの再建を目標にコンサル活動を始動したが、その間もなく、社長から電話が入ったのである。しかも、その内容は、資金繰りが出来たというのであった。

「社長!資金が出来たんですか。それは良かったですね。」
「ええ、そこで、先生にメニューを診てもらいたいと思いまして・・・」
「分りました。では、緊急ですので明日にでもスケジュールの変更をして伺いますよ」
「有難うございます」


社長の声は何か弾んでいる様子であった。これまでの苦悩を考えてみれば、当然の事であろう。私は、全てのスケジュールを変更して翌日、会社を訪問したのである。
「先生!お待ちしておりました。」
そこには、部長をはじめ、店長達が集まっていた。
「どうも、よかったですね」
こうして、メニュー改革へ着手し始めたのであった。しかし、店長の一人が不在である。そこで、「ところで、もう一人の店長は今日は休日ですか」
私は、何気なく聞いた。すると、社長が、
「先生!実は、あの店長へ店を譲ったんですよ」
こういうのである。

「エッ、何処の店を譲ったんですか」
「ええ、二号店ですわ!」平然と答えるのである。
「二号店を手放したんですか!」
私は、愕然とした。何故ならば、この店は会社の稼ぎ頭の店舗であったからだ。
「どうしてそんな事を!あの店を手放したら、もう会社活性の道は閉ざされたも同じじゃないですか」
「そうなんですが、何とかしなければと思いまして・・・」
「チョット待ってください。いいですか、残された店でトントンにするには、いまの倍くらいの売上を要するんですよ」

幾らメニューを変えたところで、そんなウルトラCがあるはずはない。そこで、
「社長、この会議は意味がないでしょう!この資金を支払へ回して、いくらかでも債権者へ頭を下げられた方がいいんじゃないでしょうか。」
社長は「実は、もう資金はメニュー改定にかけられるくらいの残高しかないんです」
こうなる事を予期していなかった私は、呆れるほかになかった。
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(10)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
これまでのあらすじ、
資金繰り困難なファミレスチェーンのコンサル担当になった私は、色々手を尽くしたが、社長の意識が全く、その危機感を持っていなかったのである。それどころか、M&Aを持ちかけていたにも拘らず、報告もなしに、一番繁盛店を売却してしまったのであった。そして、メニュー改正の依頼をしてきたのであった。

「社長!メニューの改定は無理ですよ。コレ以上、投資をする事は万全とはいえません。この会議は中止にしてください」
わたしは、社長と個人的にミーティングが必要である事と思い、メニュー会議を中止させたのである。

「分りました。」社長は、全員を解散させて、事務所で私とのミーティングに入ったのである。そこで、
「先生!実は、一日も会社にいられない状況なんですよ。ですから、従業員だけでもと思いまして、勇気を持たせておかないと」
「しかし、このメニューのお金も、無駄になりますよ。メニューが完成するまでに、一ヶ月以上掛かるんですよ。それまで、どうしているんですか」
「そうです!すみませんでした。」
こうして、その日二人の考えを一本化しておく事にして、於くまでもM&A を進めていくことになったのであった。

それから数日後、我が社の社長から、
「おい!原田、いい話になりそうだぞ!実はある回転寿司の社長が買ってもいいという話をしておるんじゃ」
「そうですか!それは良かった。早速知らせてあげましょう。どのくらいで買いとってくれるんでしょうかね」
「一回、下見にいくそうじゃ〜」
「そうですか」
これで、一安心だ!これからが私が大変なことが待っているのである。

二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(10)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
これまでのあらすじ、

ファミレスチェーンの経営活性に取組んだが、とても活性できる状態ではなかった。そこで、M&Aを計画したのである。ところが、ちょうど、顧問先の回転寿司のオーナーがこれを承諾してくれたのである。

私は、ファミレスの社長へ連絡を入れた。そして、会社の債権者へ説明をしておかなければならない。全ての返済額にはとうてい及ばないからであった。

私は、現地に出向いてこの計画に入った。彼はニコニコしている。その真意は安心から来たものか、それとも何もかもから逃げられる事なのかは分らない。
「社長!一億円くらいでしょう。だから、債権者との了承を取り付けないと・・」
「ハイ、分りました」
こうして、翌週に債権者を集めて、その説明会を開催する事になったのである。
当日、あるホテルの一室を借りて、債権者を開催した。この立会いを私がすることにした。
「皆さん、私はAコンサルティング会社の原田と申します。本日は、皆様にご説明しなければならないことがございますので、よろしくお願いいたします」
こうして、会議はスタートしたのである。

全員に伝いたいのは、負債額の三分の一しかし払う事が出来ない事である。彼は、こうした事をいえない性格で、ここまできても見栄を張っているように思えてならなかった。
「大変申し訳ありませんが、私がこの会社の分析をして今日まで、4ヶ月掛かりました。しかし、このままでは、倒産はもちろん、自己破産になることは明らかです。そこで、我が社がこの会社の買収先を探しましたところ、何とか聞き入れてもらえました。しかし、負債の全額で買い取っていただける事はありません。銀行の一部と皆様の負債の一部しかお支払する事ができません。そこで、本日お集まりいただいたのは、その後報告と了承をしていただきたい事です。」
「もし、あと何日か遅れますと、確実に倒産へ追い込まれますので、本日の即答をお願いします」と、言った説明である。

この説明に、一時は、社長へいろいろ問い合わせがあったが、彼はニコニコしてそれに答えている。ある業者さんが、「社長はあんまり会社に力を入れていなかったよね、だからこんなになったんじゃよ」
言われれば、ゴルフ三昧の毎日を知らない人が居ないくらいだ。これからどうなるんだろう。
私は見知らぬ業者ばかりで、今日が初対面であることから彼らの話へ入ることもできなかった。
二重帳簿で見栄を張る経営者の倒産(最終回)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
これまでのあらすじ、
ファミレスの倒産を何とか回避して、M&Aへ持ち込むことに成功したが、債権者会議において、私の役割は、全員に対する説明と説得であった。

みんなの意見も色々出たが、私は、強行にこの話を説得する必要があった。それでなければ、これまでのM&Aが無駄になるからである。
「皆さん!コレ以上社長のことを攻めていても、どうにもなりません。どうでしょう、この場で皆様に納得していただければ、私はM&Aを具体的に進めることにしますが、それでなければ、倒産ということになります。しかし、この会社は、店舗がすべてリースになっていますので、資産関係は、会社のものにはなっておりません。ですから、皆様にはより迷惑をかけることになると思います。」

すると、債権者の一人が、
「いや、先生!有難うございます。このままでは本当に一円の負債も払ってもらいないことが分りました。先生のおかげで、三分の一の回収が出来れば、これまでこの会社にお取引いただいたことを思えば、十分です。」
「皆さん、先生がこのような策を講じてくれなかったら、我々はどうにも出来なかったんだから、この場は皆で承知しようじゃありませんか」
彼は皆を説得してくれたのであった。そのひと声で、皆が返事をしてくれた。
私は、胸をなでおろして頷いた。
こうして、債権者全員に承諾書をいただいて、解散した。ところが、ある、業者さんが、
「先生!実はこの社長が我が社へ明日の日付で500万円の手形を切っているんですよ」

「エッ、500万円ですか?」
「ハイ、本当にここの社長は先生に助けられましたよね。我々もですが・・・」
何と、この社長は、このことを一言も私には伝えていなかったのである。明日にこの会社は確実に倒産する事になっていたのであった。
一瞬、私は額に汗を欠いてきた。
「社長!こんな大事なことをどうして・・・」私は次の言葉が出なかった。
こうして、この会社は、回転寿司チェーンに買い取られ、倒産は免れた。しかし、社長自身は、この会社の部長として働く事がM&Aの条件として付け加えられたのである。

その後、かれは、会社の部長として働いたが、事務員の石川さんと部長もついていったそうである。だが、こんな無責任で、危機感のない経営者にあって、私は、コンサルタント業が恐ろしくなっていた事も事実である。
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