開業屋 原田 諦の飲食ビジネス情報  ≪飲食店指導実績 300社533店舗以上 日本一の飲食店・開業屋≫

裏表が激しい女性経営者のパスタ店


裏表が激しい女性経営者のパスタ店(第一回)
この物語は実例です。したがって、登場人物や会社名は架空です。
全国には、色々な経営者が様々な経営センスをいかして、独特な営業を展開しているのが中小規模飲食店の特徴です。今回は、この中で、女性経営者を紹介しましょう。
その経営者は、三重県のあるパスタ店の経営者です。彼女は、とてもクリエーティブな人で、お会いしたのはもう、20年も以前に戻ります。
その会社は、その地元で有名でした。特別手打ちスパを全国でいち早く取り入れ、有名になっている会社です。とくに、その経営者の旦那は、ごつい体、いかつい顔、そして派手な成り立ちをしている変わり者でした。常にベンツを乗り回し、地元ではボス的存在に会ったのです。
わたしは、そうした会社と出会ったのは、チーフコンサルタントとしての役割を果たすためでした。と、言うのは、コンサル会社に勤務していた当時、その会社は、私どものコンサルを快く受け止めていなかったことにありました。

そこで、私がコンサル契約のお断りに出向いたのでした。早速、その会社の事務所へ伺い、その旨を伝えようとしたのですが、そこにいたのは社長でした。見るからに怖そうである。
「ああ、先生、始めまして、」ぶっきらぼうであるが、とても人がよさそうな優しさに溢れている社長であった。我が社内で噂するような人物ではない事に気がついたのです。
「始めまして、私は、チーフコンサルタント原田と申します。日ごろから大変お世話になっております。今日はまた、特別にお時間をいただきまして有難うございます」
丁重に挨拶を済ませた。そして、
「早速で、大変失礼と思いますが、率直に申し上げまして、御社におかれましては、我が社のコンサルティングがお役に立っていないように感じました。そこで、これでは、双方ともにメリットがないものと考え、私がチーフとしまして部長に代わりご挨拶に参りました。」

「いや〜、お宅の会社のコンサルタントは、経営を知らないのか、別にこれといったアドバイスもなく、訪問しても試食ぐらいで帰ってしまうんだから、我が社としてもお付き合い程度でと思っているところが正直な話です」
本当に正直な社長であった。たしかに、この会社の担当は、私の部下ではなく上司でした。彼は、こうした問題をあちらこちらで起こしている事から、いつも私との衝突が起こっていたのでした。しかし、この会社の担当まで、私が引き受ける余裕がなかったことから、私がこの役割を引き受けることにしたのでした。事務所を出る際、我が社の社長は
「おい、原田、すまんの〜、悪いがこの会社の契約を断ってきてくれんかね」
こういって、私に矛先を向けたのです。
そして、この社長との面談になったのでした。
社長と話しているところへ、私と同年輩の女性が入ってきた。決して美人とは思えないが、とてもさわやかで笑顔が素敵な女性でした。この女性の一声でした。
裏表が激しい女性経営者のパスタ店(第二回)
このコーナーは、私のコンサルティング実例を掲載しています。
これまでのあらすじ、
コンサル会社へ不信感を抱いている顧問先へ契約解除に向かった私は、そこで、経営者と解約の話をしようとしていたところへ、女性が入ってきたのである。

「原田先生ですか?お会いしたかったんですよ!どうしてうちの会社の担当になっていただけなかったんですか」
彼女は、挨拶もない状態の中でいきなりこう言うのであった。
「エッ、申し訳ありません、担当が私の上司ですので、私は個人的に遊びにはこようとおもっていたのですが・・・。」

「先生の噂は、聞いていますよ。だから先生が来てくれるなら、私達も本当にお宅の会社とお付き合いしたいわ!ネーアンタ」
彼女は、社長夫人であった。
「ええ、申し訳ありません!今日はその件で参りました。お宅の会社に取りましても、無駄な費用を払ってお付き合いする必要もないでしょうから、この契約は破棄になされたほうがよろしいかと思います」
私は、はっきりお断りをしたのである。すると、
「そうよ!他のコンサルタントならば、お断りしたいわ!だったら、先生、個人的に私達の会社を見てもらえませんか・・。」
この奥さんはとんでもないことを言い出したのである。
「とんでもありませんよ。私は、会社の一員ですから、それもチーフですのでそんな事はできません」

「じゃー、原田先生が担当になってよ!」本当にわがままな婦人である。
「でも、私は顧問料が高いし、困りましたね」
「あら、顧問料なんて高くともいいわよ!ね〜アンタ」
「ああ、そうだよ。金の問題じゃないんだよ。我々はね!先生、フランチャイズを目指していくためにお宅の会社へ頼んでコンサルしてもらっているんだよ。ところが、お宅の会社は、大手の会社ばかり大事にして、我々の会社はどうでもいいような感じだから、頭にきているんだよ」
たしかに、我が社は大手企業には色々気を使っているが、中小規模店の経営指導が出来ないでいる。それは、大手は自らが経営ノウハウがあることから、情報が欲しいだけである。したがって、経営指導の必要はなかったのであった。
「申し訳ありません!社長の言うとおりかもしれません。ですから、私のような実務屋が忙しすぎるのです」

「ねえ〜先生、お願いだから、私達の会社のコンサルタントになってよ〜」
「分りました。では会社へ帰ってから、社長へ報告した上でご連絡しますが、顧問料が高くなりますよ。現在の三倍にはなると思いますが、よろしいでしょうか」
「いいわよ!三倍でも五倍でも」
この会社は、文句を言いながら顧問料を値下げさせていた事から、毎月五万円になっていたのである。そして、彼女は、私と初めて名刺の交換をした。すると、彼女は別会社の社長であったのである。
裏表が激しい女性経営者のパスタ店(第三回)
このコーナーは、私のコンサルティング実例を掲載しています。
これまでのあらすじ、
コンサル会社へ不信感を抱いている顧問先へ契約解除に向かった私は、そこで、コンサル契約の解除を申し入れたが、逆に”ミイラ取りがミイラ”にされてしまったのである。

私は、会社へ戻り、社長へ報告した。
「社長!すみません、断れませんでした。それどころか、私に顧問になれといって聞かないんですよ。ですから、私は会費を三倍いただきます、といってやったんですが、五倍でも良いといいまして、」
「なに、そんな事を言ったのか!じゃーやっぱり、あいつに問題があったんじゃよ」
こういって、デスクに座っている部長を睨んだ。

ともかく、この会社の顧問コンサルタントを引き受けた私は、早速、第一回目のコンサルに行った。そこには社員全員が集まって、私の到着を待っていたのである。
「皆さんおはようございます」
「おはようございま〜す。」元気で、十分に教育されている様子が伝わってくる。
社長が、私を紹介して、勉強会が始まったのである。
私はまだ、打ち合わせもしていない状態から、どのような勉強会をしているのかも分らなかった。そこへ、婦人が入ってきた。
「先生!おはようございます。早速有難うございます」本当に笑顔が素敵な女性である。
「あ、有難うございます。社長からご連絡は届いているでしょうか」
「昨日とどきましたよ」
「エッ、昨日ですか。申し訳ありません。昨日の今日では本当に困りましたね」

「大丈夫よ!今日はちょうど社員の勉強会がスケジュールに入っていたので、ちょうど良かったわ!先生のご紹介も含めて、少しお話をいただければいいのですが・・・」
「ええ、大丈夫ですよ。」わたしは、快く引き受けて、社員勉強会へ参加したのである。
そこでの話は、世間話や私の調理人時代にあった出来事、失敗談など、社員の身近に感じてもらえるよう、気を配って話した。
勉強会が終って、婦人が私のそばで、
「先生!今日は社長と先生と私で、食事をしに行きましょう」
こう言ってくれた。「ハイ、初日から申し訳ありませんね!しかし、私はお酒が飲めないんですよ。不調法でごめんなさい」

「そうなの、私もお酒は全く駄目なのよ。いつも社長のお供ばっかり。だから美味しいものでも二人で食べていましょうよ」
こういって、その夜は社長夫妻に接待を受ける事になった。しかし、肝心の経営をまだチェックもしていないのだ。このまま帰れば、また、一日分時間を必要とするに違いない。こんな事を考えながら、社長のベンツに乗り込んだ。
裏表が激しい女性経営者のパスタ店(第四回)
このコーナーは、私のコンサルティング実例を掲載しています。
これまでのあらすじ、
コンサル会社へ不信感を抱いている顧問先へ契約解除に向かった私は、そこで、コンサル契約の解除を申し入れたが、逆に”ミイラ取りがミイラ”にされてしまい、結局自分の顧問先リストに入れる羽目になってしまった。

翌月、その会社から電話があった。
「先生!今度家のイタリアンハウスでパーティーがあるんですけど、参加してもらえません?」婦人からの電話である。
「パーティーですか?でも私はお酒が飲めないですからね〜」
「大丈夫よ、我が社のイタリア人シェフを紹介したいんです」
「そうですか、では伺います。会費はお幾らですか」


「先生に会費なんていただけませんわ!顔だけでもdしていただければ、いいんです」
「でも、そうは行かないでしょう」
「それより、今度見えられたときに、創業祭のイベント企画を見ていただけますか?」
「結構ですよ。それでは、事務所へFAXを流して下されば助かるんですが?」
「分りました。」
こうして、イベント企画の内容をおくって貰った。しかし、何だか内容が複雑すぎて楽しさが感じられない。
内容は、
ある商品を注文したら、クジが引けて、そのクジにはA、B、Cの選択肢があって、そこから従業員とじゃんけんをする。グーで勝てば二割引サービス券、チョキは三割、パーは半額という内容であった。これでは、お客が面倒くさくなって、余り楽しさを感じないであろう。

そこで、わたしは、電話でそのことを伝える事にした。
「専務!お客様へもっとストレートに喜びを感じさせないと、このイベントは成功しないですよ。お客様の中には、ゲームを楽しみたいお客がいるかもしれませんが、ほとんどのお客は、どのような得点があるのかを期待しているだけですから、これでは複雑すぎて、インパクトもなくなります。どうですか、この商品を召し上がったお客様と従業員が直接じゃんけんをするというのは!」
「でも、くじを引かせたいんですよね〜」
「そうですか、では、その商品と三角クジを商品へ直接つけて提供すれば、よろしいんではないでしょうか」
「そうね!それで行きましょうか」彼女は、納得した様子であった。

当日、私はイタリアンパーティーへ参加した。そして、イベントの話をしたが、すでに、当初の計画通りに進めていたのである。わたしは、このイベントに創業祭をテーマにするほどのインパクトもない事から、成功できるとはおもわなかった。
パーティーは、盛大にお客が参加していた。すでに私を知っているお客もいる。その人たちが寄ってきた。
「えっ、先生まで参加させられたの?」
「参加させられたわけではありませんが・・・。」
「いいのよ!ここにいるほとんどの人は、専務に無理やり誘われている人ばかりだから」
「エッ、そうなんですか」
これには呆れてしまった。
裏表が激しい女性経営者のパスタ店(第5回)
このコーナーは、私のコンサルティング実例を掲載しています。
これまでのあらすじ、
コンサル会社へ不信感を抱いている顧問先へ契約解除に向かった私は、そこで、コンサル契約の解除を申し入れたが、逆に”ミイラ取りがミイラ”にされてしまい、結局自分の顧問先リストに入れる羽目になってしまった。そしてパーティーに誘われたのだが、そこにきているほとんどの人がお付き合いで参加していると言う。

この女性は、凄く活発で色々な会へ参加しており、世間で言う顔が広い。よって、一声かければ結構な人が集まる。このパーティーは、これで毎月行っているらしいが、全てのお客がミリやりお付き合いで呼び出されているらしい。
私のそばへ本人が来た。


「先生!ご紹介しますね。彼が家のシェフマネージャーです」
紹介されたのは、イタリア人で私よりも相当年配の方である。しかし、そのスタイル、笑顔、サービスマナーはこれまでに見たことも無いようなワゴン裁きである。この人は相当な人物であろう。私は感じた。
良く聞いてみると、なんとイタリアだけではなく、世界でも有名な人物であり、現在ではラジオ番組でイタリア語を講座を持ち、テレビでもイタリア料理を紹介している。現在、東京の有名なイタリアン料理店も彼がプロデュースして指導しているそうだ。
私は彼と気が合い、ことばは通じないが、彼も私によって来て色々、話しかけてくる。
どうも、ここの専務(社長夫人)の悪口のようだ。
彼曰く、騙されて、日本へつれてこられたと、言っているらしい。私にはそんな人には見えないのだが、とにかく愛嬌だけは一流の女性に違いなかった。

いろんな人に紹介されて、話をするのだが、余り彼女をよく言う人が少ない。どうして、イヤなのにこんな付き合いをするのだろう。不思議に思うのであった。
とにかく、盛大にパーティーが済んだ。翌日、私は本職のコンサルをしなければならない。
ホテルから事務所へ出向いて、帳簿を見せてもらう事にした。
しかし、とんでもないことであった。昨夜パーティーがあった店舗は毎月100万円以上の赤字店舗である。
これでは無理やりでもお客を誘わなければならないであろう。さらに、大型店舗も赤字経営だ。経営体質は保っているのだが、利益が出るには程遠い状況であった。
この原因を私は、社長に問いただした。
「どうしてこんなにお金をかけたんですか?」
「この辺では一番のイタリアンを作ろうと思って、土地を買ってしまったから、大変ですよ。でも、この土地は値上がりするから大丈夫ですよ先生!」

彼は、自信たっぷりでこういった。私は、この見栄が必ず命取りになる事を言おうとした。
そこへ専務が入ってきた。
「先生!昨日はどうでした。楽しかった!」
「ええ、ありがとうございました。おかげで、シェフとも気が合いまして、これからもお付き合いをさせていただこうと考えているんですよ。もし、私のセミナーなどで講演してくだされば物凄く助かりますから、そのときは専務、お願いします」
「ええ、でも彼はイタリア人でしょう。お金にシビアなのよ」
「もちろん講演料はお支払しますよ」
「でも、そんな仕事が入ると、ここで働かなくなってしまうんじゃないかしら」
こういって、うつむいてしまったのである。何があるんだろう・・・私は思った。
裏表が激しい女性経営者のパスタ店(第6回)
このコーナーは、私のコンサルティング実例を掲載しています。
これまでのあらすじ、
パーティが終わり、本格的な帳簿調査に入ったわたしは、この会社が赤字経営であることを知った。しかも、莫大な借金を抱えているのである。しかし、その裏には、資産評価額の釣り上げ作戦が隠されているのであった。

シェフマネージャーのイタリア人の講師話から、経営本題に入った私は、
「社長!この借入金を埋める方法を考えなければ、いずれはこの店を手放さなければならなくなるでしょう」
「ええ、それまでに、何とか出店を成功させなければなりません」
「出店計画があるんですか」

「ええ、先生にも診ていただきたいのですが、いい物件がありまして」
「そうですか、それはいいですが、その店がこれらの赤字を埋めるための店になるのですか」
「多分、この店が上手くいけば毎月のショートはなくなります」
「相当危険な出店ですね。もし、その計画が失敗したら、社長!もうあとがなくなりますよ」
すると、側にいた専務が言い出した。
「せんせい、私達は、常に前向きに仕事をしていきたいんです。ですから、ここまでこられたので、これからもこの会社はそんな考えを持って行きたいんです。」
「それは、結構な事ですが、わたしは職業柄、経営に関わる危険やリスクをいち早く見出してアドバイスしていく仕事ですので、気に障ったら許してください。しかし、正直言って、前向きな話と無謀な話を分けませんと、あとで取り返しがつかなくなりますよ。」

「とくに、この店の土地価格の高騰を狙って出店したとのことですが、不動産業を営むならば、建物を建てて、大きな赤字を背負わなくともよかったじゃないですか」
「でも、この店は他に見られないように素晴らしいでしょう」
「ええ、もちろん素晴らしいのですが、社長夫妻の趣味で出されているならば、会社の経営にするのではなくて、個人経営にしておくべきですよね。ここで働いている従業員さんたちも、赤字経営に結構苦しんでいるんじゃないんですか」
わたしは、少し腹が立ってきた。自分たちの見栄や欲のために出したこの店で働いている従業員は、赤字経営を楯に、無理なことをやらせていながら、その問題には目を向けようとはしていないからであった。

利益が出ている店が2店舗ある。この店は、いずれも一号店と二号店、古い店ばかりである。この店も何れは、売上低下を招く事になるだろう。その前に店内改装なり、整備をしておく事が重要にもかかわらず、赤字経営のためにその資金運営がおぼつかない。したがって、新規出店による銀行融資を考えているのであろう。
つまり、資金繰りが切羽詰っている事が明らかなのである。
裏表が激しい女性経営者のパスタ店(第7回)
このコーナーは、私のコンサルティング実例を掲載しています。
これまでのあらすじ、
パーティが終わり、本格的な帳簿調査に入ったわたしは、この会社が赤字経営であることを知った。しかも、莫大な借金を抱えているのである。そして、売上も低下状態にある。

この会社の問題は、どうも、この専務に有るようだ。どうして、社長よりも専務の経営決断が優先するのだろう。不思議であった。
そして、創業祭も案の定失敗に終った。
売上は、普段と変わりなく、ただ、経費がかさんだだけであった。これでは、経営が上向くはずはない。わたしは、フランチャイズ展開の計画よりも、現在の経営の建て直しを勧めることにしたのである。

「社長!最初に私がお伺いしたときにフランチャイズ展開を目指しているとの事でしたが、これではとても無理な話です。とりあえず、現状経営を立て直すことを優先しなければ、どうにもならなくなりますよ」
「ええ、先生の言う通りなんですが、専務が一人で走ってしまうんですわ」
「社長が言い聞かせればいいじゃないですか」
「いつもその話になると、喧嘩ばかりですよ」
どうも、この社長、婿養子らしかった。
そこで、わたしは、新規出店を中止させ、とりあえず経営活性を取り決める事にした。
まず、専務を説得しなければならなかった。
「専務!ここは、一度経営を立て直してそれから新たな計画に入りましょう。とくに、営業不振店を活性するとともに、資金繰り計画を立て直しましょう」

私は真剣であった。なにしろ、コンサル顧問料はこれまでの三倍になっているのだから、どうにかしないと何の役にも立たないと言われかねない。そこで、これまでのデーターを分析して、大きな問題点を抽出する作業に入ったのである。
そこでもっとも問題なのは、毎月の間接費用が掛かりすぎていることであった。その最大が、事務所経費である。事務所家賃が40万円も支払っている。しかし、営業不振の大型店には個室が空いたまま、使用されていない。この部屋をパーティー専用としているのだが、これも、月に一回か二回の使用である。とても40万円を稼げるには程遠い。そこで、社長へ提案したのである。
「社長!現在の事務所をこの店舗のワンルームへ移転してください。これによって、店の管理もきめ細かくなりますし、毎月の家賃40万円が節約できます。」

「さらに、パーティーは、他の部屋でも間に合いますし、大きなパーティーは店の一部をクローズすれば可能です」
「分りました。家内と相談して決断します」
こうして、まず活性業務の一歩踏み出す事になったのである。
裏表が激しい女性経営者のパスタ店(第8回)
このコーナーは、私のコンサルティング実例を掲載しています。
これまでのあらすじ、
パーティが終わり、本格的な帳簿調査に入ったわたしは、この会社が赤字経営であることを知った。しかも、莫大な借金を抱えているのである。そこで、この会社の経営改革へ入ることになったのである。

事務所の撤退は、彼らの経営者としての見栄を崩してしまうこになる事から、中々承知しなかったが、本音はお金に困っている。よって、このやせ我慢にも理由さえあれば喜んで撤退するに違いなかった。
その効果はすぐに出ることになった。従業員が、私に言ってきた。

「先生!うちの会社の事務所はなくなるんですか?」
「エッ、どうして、事務所がなくなるはずはないじゃんか。」
「でも、原田先生が無理やり事務所を撤退せよと言って聞かないから、と言っていましたよ」
「ああ、引越しだよ。事務所が遠いから君達もいちいち事務所まで、何かと出掛けなければならないじゃないか。そこで、あの大型店舗のパーティールームを一部屋つぶしてもいいんじゃないかな〜と思って言ってみただけだよ」
「そうでしたか。専務には気をつけたほうがいいですよ先生!言っていることと腹の中は違いますから。」
なんと、この従業員は専務の悪口を私に告げるのであった。しかし、事務所の件は承知したらしい。

「ありがとう、でもどうして私にそんなことを教えるんだい?」
「この間も、先生の事を言っていましたよ。我が社のイタリア人を先生が欲しくて何かとイタリア人にいい事話を持ちかけているって!」
「エッ、そんな事・・そうか、ありがとうね」
私は身に覚えがないことに唖然とした。しかし、こうした性格の人はあちこちにいることから、気にしないことにした。しかし、とんでもないことを言いふらしているもんだな〜。これでは気をつけないと、裏で何を言われているか分らない。
”どうしても我が社のコンサルになって欲しい、”などと、ゴマをすって私に無理やりこの会社の担当にさせたのは彼女じゃないか・・・。そう思いながらも我慢したのである。

それから、数日後に専務から電話があった。
「先生!お元気ですか〜。先生の言われたように事務所を移転することにしました。ありがとうございました。やっぱり原田先生に私達の会社のコンサルタントになっていただいた甲斐がありましたわ〜。」
なんと、元気な声が電話の向こうからするのであった。私は、あの従業員が言っていたことばを思い出した。しかし、なにも、ここで問うこともいらない。そこで、
「そうですか!それは良かったですね。店の管理をしながら、事務所の仕事もやりやすくなったでしょう。今度は事務員さんも一人くらい要らなくなるんじゃないんですか?」
私は、事務所の事務員さんも大した仕事もないのに、結構大勢いることに苦言をしたのである。
裏表が激しい女性経営者のパスタ店(第9回)
このコーナーは、私のコンサルティング実例を掲載しています。
これまでのあらすじ、
この会社が赤字経営であることを知った私は、この会社の経営改革へ入ることになった。そして、事務所の移転を実施させた。しかし、その会社の専務は、従業員へ事務所撤退を私のせいにしている事が判明したのである。

しかし、事務所の移転くらいで資金ショートが解決できる問題ではなかった。そこで、今度は、毎月大きな赤字を出している、高級イタリアン店舗を撤退させる事にしたのである。
でも、この店を撤退させるには、相当の根気が要ることであろう。なにしろ、経営者夫婦は見栄の塊みたいな性格を持っているからであった。


この話を持ち出したのは、会社訪問した日である。その日も、コンサル業務が済んで食事に誘われたことから、その席で説得しようと考えた。招かれた店は、ちょうど個室になっている和食店であったことからそこで言い出すことにした。
「社長、専務、私の話を聞いてもらえませんか?」
「あら、先生!改まっちゃってどうしたの?」
「ええ、実は御社の経営改革の件で、わたしはいろいろ考えてきました。経営分析もしてまいりました。資料はここに整えてあります。しかし、社内でお話しする事はできなかったので、ここでお話させていただければと思います。」
「先生!本当に真剣にわが社のことを考えていてくださってありがとうございます。」
社長は、大きな身体を丸めて頭を下げた。

「じつは、これまで資金繰り計画を立ててみたのですが、利益が出ている店が二店舗だけですので、クリアーするには銀行返済計画変更をしなければなりませんが、大型店の借入金が大きすぎるために、銀行の信用を失う事になります。しかも、一度こうした事をすると、次の融資も影響が出ます。」
「ええ、銀行にも言われていますのよ!次の融資は、この返済額が減少させる事によって可能になるって、」
専務が言い出した。ここでは見栄もないらしい。
「そうです。そこで、今回私が出した結論ですが、イタリアンの店を閉店させる事が何よりも優先すると考えます」

二人は、顔を見合わせて声も出ない。きっと驚いて唖然としてしまったに違いなかった。
「社長!いまはこの会社を健康にする事だけに専念してください。事務所経費が月に家賃と一般経費、そして従業員の合理化などで80万円ちかく節約できたものと考えます。この店を閉店させる事で、さらに300万円も節約できるのですから、決断してください。この店のパーティーイベントも、無理な集客によって開催されているのでしょう?一部のお客様から苦情も聞いております」
私は、思い切って全て打ち明けたのであった。
裏表が激しい女性経営者のパスタ店(最終回)
このコーナーは、私のコンサルティング実例を掲載しています。
これまでのあらすじ、
一見、繁盛企業と思っていた飲食企業は、実際にその中に入ってみると、なんとその内容は、とんでもない経営危機が迫っている状態であった。わたしは、事務所の撤退を説得したものの、それでも資金繰りが円滑な状態にはならない。そこで、今度は赤字店舗の撤退を説得しなければならななかったのである。

「どうでしょう、社長!このままではどちらにしても撤退をしなければならない時期がきますよ。でも、この決断が早いか遅いかで経営は全く違います。もし、この決断が遅れて撤退しなければならないときには、会社も危うい状態のときになりますよ」
夫婦は黙ったまま、一言もなかった。


暫くすると、社長が重々しく口を開いた。
「先生!ワシらはいつも見栄ばかりはって生きてきました。これもその見栄を実現するためには必要な事でもありました。しかし、今日は恥も外聞もなく本音で話をしたいと考えています」
専務の目には、薄っすら涙が浮かんでいた。
「社長も専務も聞いてください。私は、いろいろな会社の恥部をあからさまに見てきているんです。経営はいろんなことがあって、やり甲斐や生き甲斐を感じるものでしょう。しかし、それが元で命取りになっては、何のために経営者になったのかが分らなくなります。恥ずかしい事なんかありませんよ。逆に苦しい決断のほうが、私は勇気ある経営者であると尊敬します。」
私の言葉に、社長も涙をこぼしていた。
「分りました。先生!あの店はワシら夫婦にとって何よりも大事な店ですが、コレ以上続ける事は難しいことを以前から分っていたんです。来月にも撤退をします」

「そうですか、会社の経営を立て直して余裕が出てきたら又出店すればいいじゃないですか!」わたしは、彼らに慰めの意味もあって、ことばをかけたのであった。
その夜、わたしをホテルへ送ってくれたのは専務であった。彼女は、撤退する事を未だに悔しくてしょうがない様子である。
しかし、私に何か特別に話があるみたいで、中々話せないでいる。そこで、私のほうから話を掛けることにした。
「専務!辛いでしょうが、我慢してください。この選択が一番正しいと思います」
「先生!分っています。わたしは、これまで人前でいいことばかりを言ってきました。周りの人に弱みを見せるのがイヤだったんです。」
「人間皆そうですよ。自分を良く見せたいし、見られたい気持は誰にでもあることでしょう。でも、そんな事で周りばかりを気にしていると、本当の自分を見失う事がありますよ」

彼女の表情には、これまでのような人の目をうかがいながら話をする表情はなかった。こうして、この会社は、もっとも大切にしていた高級イタリアンを手放し、経営建て直しに全力でむかった。そして、一年後、新たな小規模スパゲティーの店を出し始めたのである。その店は、決して、これまでの経営者の見栄が見え隠れするような店ではなく、投資を抑えた店になっていたのである。
この以後、専務は自分が社長になっている会社を貿易会社へ変更して、いま、マスコミにも登場するほどに頑張っているのである。
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