開業屋 原田 諦の飲食ビジネス情報  ≪飲食店指導実績 300社533店舗以上 日本一の飲食店・開業屋≫

指輪をチラつかせる社長夫人!


指輪をチラつかせる社長夫人(1)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
わたしは、取引先の紹介で焼き鳥チェーン店の経営コンサルを引き受けることになった。早速出向いた会社は、大阪で6店舗の焼き鳥居酒屋を経営している会社である。

その会社は大阪のはずれにあった。指定された駅へ到着すると、そこへ出迎えてくれたのは、優しそうな男である。しかも、体からは何となく頼りなさそうな雰囲気だ。本当にこれで6店舗もの店を経営しているのだろうか。私は不思議な思いで彼を見つめた。
「原田先生ですか、私は、やきとり五郎の藤井と申します。本日はありがとうございます。」
なんとも、関西弁ではなく、関東弁である。
「えっ、社長は関西人ではないんですか?」
「ええ、私は以前は埼玉におりました」

「そうですか!ことばが関東弁ですものね」
「ええ、10年ぐらいたつのですが、関西弁にはなじめませんよ」
「でも、6店舗もお店をもっているのですから大したものじゃないですか」
「家内が関西出身ですので、こちらのほうへ来たわけでして」
「そうですか、ところで、藤井さん!店のほうはいかがですか?」
「資金繰りが苦しくて大変です」
「そうですか、何処の店でも飲食店の難点は、資金繰りなんですよね」
車の中での会話が進んでいるうちに、到着したのは何と公民館である。
「先生、今日は従業員を集めておりますので少しお話をしていただけないでしょうか」
「ハイ、分りました。」
館内へ入ると、そこには6〜70人程度の従業員が集まっている。

こんなに従業員がいるんだ。わたしは、単なる焼きとり店の経営と軽く睨んでいた事から、この従業員の数には少し驚いた。
しかし、彼らの顔には少しも笑顔がない。もっとも、コンサルタントの話を喜んで聞く従業員は僅かしかいないのだから、当たり前かもしれない。とくに、深夜まで営業していることから昼の講義を聞く事は辛いに決まっている。
「皆さんおはようございます。皆さんは深夜まで営業しているのに、この時間に話を聞くのは眠くなるに違いありませんね。少しの間我慢して聞いてください」
こうして、簡単な挨拶と自己紹介、そして外食業界の最近の傾向などを話し、終了した。
その後、社長から奥様を紹介された。しかし、社長とは相当の年齢の差があるようである。
少なくとも20歳くらいは違うだろう。私にはそう見えた。

なるほど、だから、ここの社長は頼りなく見えるのか!一人考えながら奥様に挨拶をした。
「始めまして、原田でございます。今後ともよろしくお願いします」
「まあ、ご苦労はんです。ほな最近は飲食店の方はどなんでん?」
「ええ、何処も似たようなところですね。大手と小規模店の格差が大きいですからね」
「そんなんですよ!家の店の近くにも大手さんの店がギョウサンあるでっしゃろ。大変でっせ」
どうも、この奥さんのほうが、経営の主導権を握っている様子である。

指輪をチラつかせる社長夫人!(第二回)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
わたしは、取引先の紹介で焼き鳥チェーン店の経営コンサルを引き受けることになった。早速出向いた会社は、大阪で6店舗の焼き鳥居酒屋を経営している会社である。
早速、この会社へ出向き社員との対面をしたが、何とも元気はなく、この様子は社長の表情に全く瓜二つであった。

この会社は奥様が主導権を握っているものと感じた私は、奥様へ色々と質問をすることにした。
「奥さん!新しく出店したお店と言うのは、順調なのですか」
「いえ、ち〜とも順調じゃありまへん」
平気な顔をして言うのであった。
心配している様子もなく、何か人事みたいなものを感じたのである。

その夜、社長と二人きりで、店舗クリニックをした。この店は、ショッピングセンターとクラスタースタイルで出店している居酒屋である。店は110席の大型店で売上は月商600万円程度である。
「社長!この店で600万円では少し苦しいですね!でも、サービスがほとんど出来ていない状況ですよ。居酒屋は接客が繁盛店のポイントになりますから、この辺を強化しなければなりませんね」
「ええ、そうなんですよ。ここの店長を呼びますので、話してやってください」
こうして、店長の牧田君が席に来た。
「店長!この従業員の教育はどの時間帯でやられているんですか?」
「先生!教育をする時間なんて全くと言えるほどできる状態ではないんです」
「どうしてです。」

「先生!私達は寝る時間もないんですよ。一週間に一日の休みもママならない状態なんです。さらに、朝の5時まで営業をしておりますので、帰宅は6時近いのです。しかし、店には昼過ぎ1時には入らないと、仕込みやいろいろな段取りが出来ないんです。」
「どうしてそんなにハードな仕事になるんですか」
「社員が一人もいないんですから仕方ありません」
「社員が一人だけですか?」
「ええ、これだけの店で社員が一人ですからやらなければならない事が山積みになっているんです」
「でも、今日集まった人数は6〜70人いたじゃないですか」
「アレはアルバイトやパートさんも含まれて参加していたんですよ」
「そうだったんですか。」

そこで、社長が、
「先生が来られるので、全員が参加するよう申しておきました」
「先生!わたしもコレ以上働けないほど働いているんですよ」
「どうしてです。」
「ええ、人件費を抑えるためにですが、もともと私は調理人でしたので、ず〜と現場要因の一人として働いているんです。」
なんとも、この社長は従業員と一緒であった。よって、従業員達は社長についている様子である。
指輪をチラつかせる社長夫人!(第三回)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
わたしは、取引先の紹介で焼き鳥チェーン店の経営コンサルを引き受けることになった。早速出向いた会社は、大阪で6店舗の焼き鳥居酒屋を経営している会社である。しかし、その会社には何か分らないが、嫌な感じがしてならなかった。

その日は、この店のクリニックで仕事を終わりにした。翌日、社長が駅まで送ってくれると言ってホテルまで迎えに来てくれた。昨夜も遅くまで営業していたに違いないのに本当に申し訳なく思い、
「社長!気を使わないで下さいよ!昨夜も遅かったんでしょう」
「ええ、でも、もう慣れていますから。それよりもいろいろ先生とお話ができるのが嬉しくて、気になさらないでください。」


そう言って、彼はニコニコしていた。昨日と違って、なにか元気が出ているように感じるのであった。
「社長!何かいいことでもあったんですか?」
「いえ、別にそんなもの有りませんよ。じつは、先生、そうだ!コーヒーでも飲む時間はないですか」
「いいですよ。今日は自宅へ帰る日ですので!」
「ありがとうございます。」
こうして、二人はホテルのロビーでコーヒーを飲むことになった。
彼は、何となく浮き浮きしている様子である。何かあったに違いない。私はそう感じた。
「先生!先生に来ていただいて本当によかったです。」

「どうしてですか、未だ何もしていないのに!」
「いや、先生、私は誰にも相談できないで唯働くだけ。こんな人生でいいのか、と常に考えさせられているんですよ」
「どうしてです。だって、店も順調に出店していて何が不満なんです」
「先生!実は私は元和食の板前で働いていたのですが、今の女房と結婚して大阪へ来たんです。しかし、毎日奴隷のような生活で逃げ出したい気持なんです。そんなところへ先生がきてくれたので、何でも相談できる事が本当に嬉しいんです」
「でも、奥さんは店に出ているわけではないんでしょう。」
「ええ、店には出ていないのですが、金の面やそのほかの面でも女房と娘が全て仕切っているものですから、唯働くだけの人間なんです」
「奥さんと話したんですか」

「いえ、話せませんよ。埼玉の店で働いていたときに知り合ったんですが、彼女はクラブの経営をしていまして、それで一緒になったものですから、彼女の言うなりでもう、何の楽しみもないんですよ」
彼の結婚は、どうも奥さんに面倒を見て貰っていたらしい。よって、彼の技術を商売へ生かそう、と奥さんが大阪へ出てきて焼き鳥やを出店していたのである。

指輪をチラつかせる社長夫人!(第四回)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
わたしは、取引先の紹介で焼き鳥チェーン店の経営コンサルを引き受けることになった。早速出向いた会社は、大阪で6店舗の焼き鳥居酒屋を経営している会社である。しかし、その会社には何か分らないが、嫌な感じがしてならなかった。そこへ社長が私に告白した事とは、

この社長が告白した事とは、社長とは名ばかりであって、奥さんの従業員と全く変わらない状況になった事である。わたしは、彼を哀れむとともに、どうしてこの状況から抜け出せないのか、それも考えてみたが、夫婦間の事なので、そこまで入り込む事を控え無ければならなかった。
そして、4月、わが事務所では、年に一度、恒例で花見会を開催していた。

ここは、無礼講で私が料理を作り、全国からクライアントや友人知人が楽しく花見を楽しむ事にしていたのである。自宅の桜が満開になると、杯に舞い散る桜の花びらが見事にこの宴を演出してくれる、一年を通じてもっともいい季節である事から、より多くの人たちを誘う事にしていた。
ところが、この宴に藤井社長が参加してきたのである。チョット驚いた。何故ならば、現場を抜けて、私達のこうした集まりへ参加できる状況になかったと思ったからである。しかし、彼は、孤独な自分をこうした場で発散させたかったに違いない。新入りの藤井社長に対して、全員が歓迎した。
経営者同士、同じような悩みを抱えている事は当然であるが、彼の場合には、それを更に上回る悩みも抱えていた。

かれは、その日、泥酔い状態になってしまった。気分良く飲みすぎたのであろう。そして、その苦しさを発散させたかったに違いなかった。
その一週間後、わたしは彼の会社訪問を迎えた。また、彼は駅まで私を迎えに来ていた。
「先生!この間は本当にすみませんでした。あんなによった事はないんですが、皆さんに失礼な事はなかったでしょうか」
「あの会は、無礼講ですから、皆が気を抜いて日ごろの悩みや苦悩を忘れる会ですので、心配要りませんよ。社長はどうでしたか、楽しく過ごせましたか」
「いや〜、今でも広島の社長さんや横浜の社長さんに励まされて、元気になりましたよ」
「そうですか!それは良かった。又来年も参加してください」
「もちろん、行かせて下さいよ」

そして、また、先だって皆が集まった公民館へ到着した。そこには、奥様も娘さんも参加していたのである。
そこで、私の講義が始まった。当日は、仕事の合理化について話すことにした。この状態では、従業員が働き方の工夫をしない限り、経営も向上しないし、彼らの過重労働の解決も出来ないからであった。しかし、私の講義が終了した後である。奥さんが壇上に上った。

指輪をチラつかせる社長夫人!(第五回)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
わたしは、取引先の紹介で焼き鳥チェーン店の経営コンサルを引き受けることになった。早速出向いた会社は、大阪で6店舗の焼き鳥居酒屋を経営している会社である。しかし、その会社には何か分らないが、嫌な感じがしてならなかった。数ヶ月が過ぎたその日、私が感じていた嫌な予感が的中したのである。

その日は従業員教育の予定は入っていなかったので、これからの仕事の進め方などを講義して実際に、ワークスケジュールの引き方などの実践的教育に入ろうとした、そのとき、
「皆さん!お疲れ様です。ママの話を少し聞いてください」
いきなり、奥さんが、壇上に上り、話し出したのであった。

「今日はご苦労様です。毎日一生懸命に頑張ってもらっているんやけど、このままでは、うちの会社はアカンようになってしまいま!」
皆はキョトン!として奥さんの話に耳を傾けていた。多分、今日初めてこうした話をしてのであろう。従業員は興味を持って聞こうとしていた。
「先生が言うとおりでっせ!皆が頑張らんと会社はなくなりまんねん!これ見てや、私の指輪はこの会社の財産なんや!皆が頑張らないと、この指輪が消えてしもうんや」
いきなり、指にはめたおおきなエメラルドの指輪を壇上で従業員に掲げて見せたのであった。
わたしは、ビックリしたなんてものではなかった。”この人は何をしようとしているんだろう〜”とても理解できる事ではなかった。すると、
「いいかーみんな!この指輪が私の指からなくなったときは、うちの会社が危ないときやからしっかり気張ってや〜」

従業員達もビックリしたのであろう。隣同士で顔を見合わせる始末である。
わたしは、社長の表情を気にしたが、顔を背けて奥さんの顔を見ようとはしなかったのである。つまり、彼女にしてみれば、これは会社の財産だが、この指輪がここにあるうちは、会社は安泰だが、もし、これを売らなければならなくなったときには、会社が危ないときと考えておいてくれ!と言う事なのであろう。
それにしても、余りにもえげつない表現の仕方であろう。それでも、従業員達はそれになんら答えようともしないでいる。ここには、会社の幹部と呼ばれる従業員もいるわけだが、彼らでさえ知らん顔を見せているのであった。
どうして、こんな経営者の言う事が聞けるのかが理解できなかった。彼女は、それを言うと、壇上から降りて、さっさと帰ってしまったのである。

私は、呆然とするばかり、何事が起こったのかさえ理解が出来ない状態でいた。そこへ、社長がきて、
「先生!申し訳ありません。女房は金が有ると貴金属や宝石に変えてしまうんですよ。宝石や貴金属は人を裏切らないから、と言うんです。」
「そうですか、でも、従業員さんはどのように感じているでしょうね」
「彼らは、大変大変と言いながら、多く働ければ給料も多いわけですから、我慢しているんですよ」
なんと、従業員は時間外労働で得る収入が目的で遭えて大変ながらも、長時間労働を進んでしているのであった。

 指輪をチラつかせる社長夫人!(第六回)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
わたしは、取引先の紹介で焼き鳥チェーン店の経営コンサルを引き受けることになった。早速出向いた会社は、大阪で6店舗の焼き鳥居酒屋を経営している会社である。ある日、わたしは、従業員教育の講習会へ出席して講演が終ると、奥さんが壇上に立ち、エメラルドの指輪を高々と掲げて、従業員へ叱咤激励的パフォーマンスをしたのであった。

この会社は、これから内容チェックをする事になっていたが、これまでの表面調査では、とても、コンサルタントが立ち入るようなレベルではなかった。従業員にしてみれば、お金は欲しいから長時間労働を黙認しているにも関わらず、長時間労働に対する不満が出ている。もし、私が介入して、長時間労働を廃止するような事にでもなったらどうするであろう。彼らは、何らかの不平不満が出てくるに違いない。
一方、経営者側にしても、何をどうしたいのかがまったく明確ではない。

これでは、経営改革や従業員教育を施してみても、何のためにこのシステムが必要なのかも理解されれう事はないだろう。これでは、最終的に社長の慰め役で終ってしまうに違いない。
そこで、私は、とりあえず経営コンサルティングの契約を従業員教育と財務改革と言う事で交わす事にしたのである。
さっそく、財務に目を通す事にした。担当は娘さんであった。彼女は25歳で子供もいる。したがって、家族経営のもっとも目玉のところを担当しているのであった。
「先生!三年分の決算書と今年の損益計算書を用意しておきました。」
彼女に前もって準備させておいた書類は、とりあえず整っていた。
「ありがとう、あなたが一人でこれだけの会計を預かっているんですか。」
「ええ、あとは、会計士さんにお願いしてありますから」

「そうですか、あなたはこれまでこのような仕事をしてきたんですか?」
「いえ、大阪の会社でOLをしていました。子供が出来たので、母の仕事を手伝って子供を見てもらっているんです」
「ああ、そうか、お母さんがあなたのお子さんの面倒を見ているんだ」
「ええ、とても子供の面倒を見ている暇がないんですよ」
それはそうだろう。6店舗の経営の経理・会計、財務を一人でこなすのはとてもできることではない。さぞかし、優れた能力の持ち主に違いない。私はそう思いながら、帳簿のチェックに入った。
ところが、なんと、帳面らしきものは何もないのである。あるのは、会計事務所から届けられている決算書と各月の試算表だけである。あとは、大学ノートにつけている何だか分らぬ数値が並べてあるだけである。

わたしは、とにかくお金の流れが知りたかった事から、彼女に問うことにした。
「ところで、毎日の帳簿は何処にあるんですか」
「そんなものつけていませんけど。とにかく、毎日の支払いに終われていまして、資金繰りだけがわたしの仕事です。」
「すると、この会社は経理や会計はいないんですか。」
「はい、伝票をためておいて会計士に持っていくだけです。」
私は、この一言で呆然とした。これだけの店を経営しているのに、経営の管理については全くと言えるほど、無知なのであった。
指輪をチラつかせる社長夫人!(第七回)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
わたしは、取引先の紹介で焼き鳥チェーン店の経営コンサルを引き受けることになった。早速出向いた会社は、大阪で6店舗の焼き鳥居酒屋を経営している会社である。従業員と経営者夫妻の問題に困惑しながらも、何とか経営の改革作業へ取り組もうとしたが、そこには呆れるほど杜撰な管理状況に驚くばかりであった。

管理帳票が全くない会社を見たのは始めてであった。とにかく、会計士が伝票から拾い出して毎月の試算表を作成しているのである。したがって、各店舗の損益やデーターは何一つないのであった。これでは、これからどのように指導して行けばよいのか、私は経営改革のスタート時点で挫折感を味わうことになった。


「先生!これから色々教えてください」
娘さんは、このように言ってくるのだが、なにから手をつけたら良いのか、混乱するばかりである。
「とにかく、売上を一時的に本部へ集める事にしてください。ですから、店舗の支払は小口現金で支払うようにして、それ以外は本部が支払うようにしてください」
「解りました。私は、支払のお金が足らない事で毎日走り回っているんですが、もう、限界なんです」
「でも、毎日100万円近い資金が売上で入金されているんでしょう」
「ええ、でも、銀行返済が毎月15日で、店の家賃が20日で、従業員の給料が月末ですので、そのお金をためるのが大変なんです」

「材料屋さんの支払はどうしているんですか?」
「ええ、小切手で支払っているんですが、ほとんど先付け小切手(支払期日を前倒しにした流動負債)になっているんです。」
「エッ、先付け小切手を振り出しているんですか。とんでもない事をしているんですね」
「でも、業者さんにお願いしていますので何とかこれまでやれています。」
「そんな問題じゃないでしょう。それでは次の支払とその小切手の期日がダブったりしているんじゃないんですか」
「ええ、ですから、そのときには又先付けでお願いしているんです。」

もう、手の施しようがなかった。これでは、自転車操業どころか、負債は雪だるま式に増えてくるであろう。しかも、解決のめどは借り入れか、支払い停止を強行するしか方法が残っていなかったのである。
指輪をチラつかせる社長夫人!(最終回)
このストーリーは、私のコンサルティング実例です。会社名人名は架空です。
わたしは、取引先の紹介で焼き鳥チェーン店の経営コンサルを引き受けることになった。早速出向いた会社は、大阪で6店舗の焼き鳥居酒屋を経営している会社である。従業員と経営者夫妻の問題に困惑しながらも、何とか経営の改革作業へ取り組もうとしたが、そこには呆れるほど杜撰な管理状況に驚くばかりであった。

このままでは、倒産は目前であるが、社長を初め奥さん、娘にしてもそうした危機感を持っている様子は全くない。何があるのか全く検討も付かないが、とにかく資金が緊迫していて、支払は毎日のように不足しているのであった。


社長の話をもう一度考え直したが、奥さんが何処へお金を持って行ってしまうんだろう。私は、思い切って奥さんとあって話すことにしたのである。
「奥さん!現在の経営では資金繰りが忙しくて、危険な状態ですが、何か計算された事でもあるんですか?」
「いえ、何も有りませんよ。支払は、私の信用で何とか大丈夫なんですが、銀行の返済や税金が溜まっている支払が大変ですねん」
「しかし、それも限界ではないんではないんですか」
「先生!もしそうなったら、私の宝石を売って払うしかないわね〜」
「宝石ですか?」
「人間は信用できへんけど、宝石は嘘をつかへんから宝石こうてまんねん」
「では、余剰金が全くないのは、奥さんが宝石へ投資しているんですか」

「そうや、お金はすぐに消えてしもうやんか!でも宝石は、消えへんのよ」
「それはそうでしょうけど、売るときは安くならないんですか」
「私のところは大丈夫ねん!長い付き合いの業者ですから」
もう話す言葉もなくなってしまった。この奥さんが現金を宝石に変えて、業者やその他の支払を延ばしに伸ばして、ギリギリのところで現金で支払うと言う事をしていたのであった。
私は、この会社を指導する事ができない事を社長に告げて帰宅する事にした。
「社長!誠に申し訳ないのですが、この会社に私が関わっていても、何のお役にたちません。私どもの支払もすでに6ヶ月遅れていますし、このままですと膨大な売掛金になってしまい、私どもも大変ですので、当分の間休ませてください」
「先生!すみません、私もこれからの人生を考えているところですので、又困ったときにはお力になってください」
こうして、丁寧にコンサルティングをお断りをしたのだが、その後の支払は全くなかった。

私どもの売掛金は、宝石に変えられているに違いない。それから、私どもは請求書を出し続けていたが、一年後、何と弁護士から「買掛金の覚えはありませんので請求書の送付を中止するよう」と言う、書類が届いたのである。
どこまでこのような経営を続けるつもりなのだろうか。私は、大人気なかったが、証拠書類と契約書を弁護士へ突きつけて請求した。
すると、あっさり支払いに応じたのである。もう、こんなクライアントはこりごり。
彼らは、決して豊な人生を送れる経営者にはなる事はないだろう。そう思いながら現在も振り返っている。

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