8月の飲食業倒産は80件
東京商工リサーチが2026年9月4日に公表した調査によると、8月の飲食業倒産は80件で前年同月比42.8%増となり、8月として過去30年間で最多だった。1〜8月累計は701件、前年同期比8.8%増。2025年に記録した年間1002件という高水準を上回るペースで推移している。
小規模店ほどコスト増を吸収できない
倒産増加の背景には、食材、光熱費、人件費など複数のコスト上昇が重なっている。大手チェーンであれば共同仕入れ、物流効率化、システム投資などによって一定の吸収余地があるが、1〜数店舗を運営する事業者は仕入れ交渉力が弱く、価格転嫁の失敗がそのまま資金繰り悪化につながりやすい。
インバウンドの恩恵にも地域差
訪日外国人が過去最高圏で推移していても、すべての飲食店がその需要を得られるわけではない。観光地、空港、主要駅、繁華街と、住宅地やオフィス周辺の個人店では来店客構成が異なる。海外観光客が増えているというマクロニュースだけを根拠に売上回復を見込むのは危険だ。
閉店判断を遅らせるほど負債が膨らむケース
飲食店は設備、保証金、内装など初期投資が大きいため、赤字でも「投資を回収するまで続けたい」と判断しやすい。しかし、営業赤字を借入で補い続ければ、最終的な撤退コストは膨らむ。経営者は月次損益だけでなく、現預金残高、借入返済額、家賃、税・社会保険、仕入債務を含めた資金繰り表を作り、何カ月持つのかを確認する必要がある。
事業再生では店舗ごとの採算管理が重要
複数店舗を持つ企業では全社売上だけを見ず、店舗別営業利益、家賃比率、人件費率、原価率を比較すべきだ。不採算店舗を早期に閉鎖することで、黒字店舗やブランド自体を残せる場合がある。居抜き譲渡や事業譲渡、M&Aを選択すれば、原状回復費や設備処分費を抑えられる可能性もある。
2026年後半は「売上」よりキャッシュ管理
倒産件数の増加は、客が完全に消えたというより、売上があっても利益と現金が残らない事業者が増えていることを示す。値上げ、新メニュー、販促に取り組む一方で、撤退基準と資金繰り基準を事前に決めておくことが重要だ。飲食店経営では、繁盛して見えることと財務的に安全であることは同じではない。
LINE
WeChat