8月は80件、30年間で同月最多
東京商工リサーチが2026年9月4日に公表した調査によると、8月の「飲食業」倒産は80件で前年同月比42.8%増となった。8月としては同社が比較可能な30年間で最多。1~8月累計は701件で、前年同期を8.8%上回った。7月も112件と極めて高い水準であり、外食市場全体の売上が回復する中でも、事業者の退出は増えている。
特に資本力の小さい事業者への負担が大きい。8月は資本金別で個人企業などが30件を占め、食材、電気・ガス、人件費の上昇を価格へ十分転嫁できない店舗が資金繰りに追い込まれている。
「黒字なのに現金がない」を防げるか
飲食店では、損益計算書上の利益と現金残高が一致しない。設備投資の返済、税金、社会保険料、食材の先払いなどが重なれば、売上が前年を超えていても現金が減ることがある。経営者は月次損益だけでなく、少なくとも13週間程度の資金繰り予定を作り、給与、家賃、仕入れ、借入返済、税金の支払日を確認したい。
とりわけ危険なのは、値上げを先送りしながら借入で赤字を補う状態だ。原材料費が恒常的に上昇している場合、売上増で吸収できない限り、時間がたつほど資金が減る。
原価率だけでなく「粗利額」を見る
価格転嫁では、原価率の数字だけを追うと判断を誤る。例えば1000円の商品を原価300円で販売している場合と、1200円に値上げし原価が360円になった場合、原価率は同じ30%でも粗利額は増える。逆に仕入価格だけが上がり販売価格を据え置けば、客数が同じでも店舗の固定費を負担できる粗利が減少する。
商品ごとの原価率と販売数を掛け合わせ、どの商品が粗利総額を作っているのかを確認する必要がある。売上上位商品と利益貢献上位商品は必ずしも同じではない。
撤退基準を決めることも経営
倒産を避けるには、事業再生だけでなく早期撤退も選択肢になる。赤字店舗を複数抱える企業では、黒字店舗の利益で赤字を補填し続けた結果、会社全体が弱体化するケースがある。店舗別営業利益、家賃比率、人件費率、契約更新時期、原状回復費などを確認し、撤退基準を事前に決めておくことが重要だ。
2026年は「売上が戻ったから安心」が最も危険
外食需要は回復している。しかし現在の倒産増加は、売上の回復だけではコスト構造の悪化を吸収できない事業者があることを示している。2026年後半に経営者が確認すべきなのは、前年比売上よりも営業キャッシュフローと店舗別採算である。
赤字が続く場合は、値上げ、営業時間短縮、メニュー削減、仕入先再交渉、店舗統合などを早期に実行する必要がある。対策を先延ばしにするほど、事業再生に使える選択肢と現金は少なくなる。
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