同日に二つの戦略的判断
飲食店を展開するWDIは2026年8月18日、点心専門店「添好運」に関する事業再編を進める方針を明らかにした。日本M&Aセンターが整理した公表情報によると、WDIは連結子会社WDI Dim Sum Japanの株式30%を追加取得し完全子会社化する一方、米国子会社が保有するTim Ho Wan, Inc.の持分および北米における事業展開権を譲渡する。
国内事業への関与を強めながら、北米では資本・運営形態を見直すという地域別の選択と集中と捉えることができる。
M&Aは店舗数拡大だけが目的ではない
飲食業界のM&Aというと、競合店を買収して店舗数を増やすケースがイメージされやすい。しかし実際にはブランド権、商標、運営会社、海外地域の展開権など様々な資産が取引対象になる。
フランチャイズ事業では、ブランドを所有する企業と店舗を運営する企業が異なる場合も多い。そのため契約期間、ロイヤルティー、地域独占権、商品調達条件などが企業価値に大きく影響する。
飲食M&Aで確認すべき事項
- 既存店舗の利益:売上ではなく店舗別EBITDAや営業利益を見る。
- 賃貸借契約:名義変更や承継が可能か確認する。
- ブランド契約:商標利用期間やロイヤルティー条件を確認する。
- 人材:店長や料理人が買収後も残るかを確認する。
- 簿外債務:未払残業代、原状回復、リースなどを調査する。
海外ブランド導入には別のリスクもある
海外で成功した飲食ブランドを日本に持ち込めば話題性を得られる一方、日本の賃料、人件費、食材調達、消費者嗜好に合わせなければ収益化できない。逆に日本発ブランドを海外展開する場合には現地パートナー、法制度、為替、物流など国内にはないリスクが生じる。
したがって「有名ブランドだから成功する」という判断ではなく、地域ごとの収益性を個別に評価する必要がある。
中小企業にも増える事業承継型M&A
飲食業界では後継者不足を背景に、黒字店舗でもオーナーの高齢化によって譲渡を検討するケースがある。買い手側にとってはゼロから物件を取得し内装を作るより、既存店を引き継ぐ方が初期投資を抑えられる場合がある。
一方で赤字店舗を安く買っても改善できなければ負担になる。今後の飲食M&Aでは、ブランド名や店舗数よりも「どの地域・どの店舗に資本を集中させるか」というポートフォリオ経営の視点が一段と重要になる。
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