HACCP制度化から5年

食品衛生法改正により、2021年6月1日から原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められている。小規模な飲食店については、業界団体が作成し厚生労働省が確認した手引書を利用した簡略化された方法で対応できる。

厚生労働省は2026年6月5日、新たに「HACCP衛生管理記録アプリ」を公開した。制度そのものが新しく始まったわけではないが、紙中心だった記録をデジタルで管理しやすくする環境が整いつつある。

なぜ記録が重要なのか

HACCPでは衛生管理計画を作るだけでは不十分である。実際に温度確認、冷蔵庫管理、従業員の健康状態、清掃などを実施し、その結果を記録して振り返る必要がある。

食中毒などの事故が発生した場合、いつ、どの食材を、どのように管理していたかを説明できることが重要になる。記録は行政対応のためだけではなく、店舗自身を守る証拠でもある。

飲食店で確認したい基本項目

  • 原材料の受入れ:品質、温度、期限などを確認する。
  • 冷蔵・冷凍設備:設定だけでなく実際の庫内温度を確認する。
  • 加熱工程:中心部まで十分に加熱できているか確認する。
  • 従業員管理:体調、手洗い、制服などの衛生状態を確認する。
  • 清掃記録:厨房、トイレ、調理器具などを定期的に確認する。

人が変わっても同じ衛生管理を行う

飲食店ではアルバイトや外国人スタッフなど複数の従業員が勤務する。店長一人だけが衛生ルールを理解していても、他のスタッフが知らなければ事故は防げない。

チェックリスト、写真入りマニュアル、多言語資料などによって誰が勤務しても同じ基準で作業できる状態を作ることが重要だ。新人教育の初日に衛生ルールを説明し、一定期間ごとに再確認する仕組みも必要になる。

衛生管理はブランド価値

SNS時代には一度の食中毒や異物混入が短時間で拡散する。行政処分の有無にかかわらず、店舗ブランドへの影響は大きい。衛生管理は売上を直接増やす業務ではないため後回しになりやすいが、事故を防止する最も基本的な経営管理である。

デジタル記録を活用すれば、紙の紛失を防ぎ、過去の記録確認も容易になる。2026年以降はHACCPを「書類を作る制度」と捉えるのではなく、毎日の厨房管理を標準化する経営システムとして運用することが求められる。