飲食店舗は「箱が空いている」だけでは営業できない

飲食店の物件探しでは駅距離、賃料、坪数、視認性などが注目されるが、実際の開業で問題になりやすいのが設備条件である。港区は2026年5月に更新した建築物の衛生面における事前指導情報で、飲食店舗を有する一定の建築物を対象に、換気、給排水、廃棄物保管場所などの衛生設備について事前指導を行っている。

店舗向けの例として、厨房の排気ダクトを周辺への影響が少ない場所へ排気することなどが示されている。飲食店では臭気、煙、油、騒音が近隣とのトラブルになりやすいため、単にダクトが存在するだけでなく、排気位置や容量が予定する業態に適しているか確認する必要がある。

ラーメン、焼肉、カフェでは設備条件が違う

同じ飲食店でも、必要設備は業態によって大きく異なる。重飲食では強い排気能力やガス容量、グリストラップなどが必要になる場合があり、カフェや軽飲食とは条件が異なる。既存店舗が飲食店だった物件でも、以前の業態で使用できたから自店でも問題ないとは限らない。

内見段階で厨房設備業者、内装会社、場合によっては建築士など専門家に確認してもらうことが、後から高額な追加工事が発生するリスクを減らす。

省エネルギーも店舗設備の重要テーマ

東京都環境局は既存建築物について、空調、照明、熱源などを建物全体で最適化する省エネ改修の技術実証事業を進めている。対象や制度は個別に確認する必要があるが、エネルギー価格が飲食店の利益を圧迫する中、省エネは環境対策だけではなく経営上の問題になっている。

冷蔵庫、冷凍庫、製氷機、食器洗浄機、空調、給湯などは長時間稼働するため、購入価格だけで設備を選ぶと長期的な電気・ガス代が増える可能性がある。

契約前に確認したい設備項目

  • 電気容量とガス容量
  • 給水・排水能力
  • 厨房排気ダクトの経路と排気先
  • グリストラップの有無と容量
  • 室外機の設置場所
  • ゴミ保管場所と搬出ルール
  • 営業時間や臭気に関する建物規約

安い賃料でも設備工事が高ければ割高になる

物件比較では月額賃料だけを見るのではなく、初期工事費を契約期間で割った実質的な店舗コストを考える必要がある。例えば排気ダクト延長や電力増設に数百万円が必要であれば、賃料が少し安いメリットは簡単に消える。

反対に、適切な厨房設備が残る居抜き物件は初期投資を減らせる可能性がある。ただし中古設備の残存耐用年数、故障リスク、リース契約の有無まで確認する必要がある。

飲食店物件は不動産契約と店舗設備を別々に考えるべきではない。営業したいメニューとオペレーションを最初に決め、それを実現できる建物かを確認してから契約することが、開業コストを抑える最も基本的な方法である。