HACCP記録をスマートフォンで管理

厚生労働省は2026年6月5日、一般飲食店事業者向けの「HACCP衛生管理記録アプリ」を公開した。衛生管理計画や実施記録をスマートフォン、タブレットから入力できる仕組みで、HACCPの普及と継続運用を支援することが目的だ。日本では2021年6月1日から原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められており、飲食店も対象である。

重要なのは計画より「毎日の記録」

小規模飲食店ではHACCPという言葉を知っていても、衛生管理計画を一度作成しただけで記録が続かないケースがある。実際には冷蔵庫温度、従業員の健康状態、交差汚染防止、加熱状況、清掃などを決められた頻度で確認し、問題があった場合にどう対応したか残すことが重要である。記録がなければ、事故発生時に適切な管理を行っていたことを確認しにくい。

夏期は細菌性食中毒リスクが高い

厚生労働省は2026年7月1日から8月31日まで食品・添加物等の夏期一斉取締りを実施した。8月31日時点でも飲食店を原因施設とするカンピロバクター食中毒などの監視指導結果が公表されている。気温が高い時期は食品管理のわずかな不備が食中毒につながりやすく、仕入れから保管、下処理、加熱、提供まで一連の管理が必要となる。

デジタル化しても責任は自動化されない

アプリを導入すれば衛生管理が自動的に適正化されるわけではない。入力だけして実際の温度を測定していなければ意味がない。店舗責任者は誰が何時にチェックするかを決め、異常値が出たときの対応もマニュアル化する必要がある。冷蔵庫が基準温度を超えていた場合に食材を廃棄するのか、別設備へ移すのかまで具体化しておく。

新人・外国人スタッフにも理解できる運用を

衛生マニュアルが日本語の長文だけでは、アルバイトや外国人スタッフが十分理解できない場合がある。写真、ピクトグラム、色分けを使い、手洗い、包丁・まな板の使い分け、加熱温度などを視覚的に伝えるとよい。多店舗企業では店舗ごとに方法が違わないよう、本部で基準を統一することも重要だ。

衛生記録は経営リスク管理そのもの

食中毒が発生すれば営業停止、顧客への補償、口コミ悪化など経営への影響は大きい。衛生管理のコストは売上を直接生まないように見えるが、重大事故を防ぐ保険に近い。2026年のHACCP記録アプリ公開を機に、紙のチェックシートを形式的に残す運用から、毎日の異常を早期発見する仕組みへ移行することが飲食店に求められる。